長野県 黒谷町シリーズ


満月
黒谷町とは・・・
 この「長野県黒谷町」とは架空の土地名。
この地を舞台として発生した一連の事件を一部のファンの間で
「(長野県)黒谷町シリーズ」と呼んでいます。
ハードボイルドなGメンとは異なった趣なので、お気に召さない方も多々いるとは
思いますが・・・。

 いずれにせよ黒谷ファンが愛してやまない悪党たちが活躍した名作シリーズです。
(後半は迫力不足は否めません・・・。)

彼らの強烈な個性、それを演じた名俳優たちのどこがアドリブだかわからないセリフ、
刑事たちの活躍すら霞むほどの名演技の数々・・・、が「黒谷町」の最大の魅力であります。
第218話 梟の森みな殺しの夜
第273話 怪談・死霊の棲む家
第276話 夜囁く女の骸骨
第281話 夜歩く魔物の花嫁
第285話 満月の夜 女の血を吸う男
第290話 X’masカードの中の人骨
第296話 雪の夜悪魔が生んだ赤ん坊
第302話 露天風呂に浮かんだ白い死体
第315話 独房の中の花嫁
第326話 闇の中の女子大生殺人事件
第351話 幽霊の指紋
柿




218『梟の森みな殺しの夜』
 土地、名前の設定こそ違えど黒谷町シリーズの原点となるストーリー
後の望月源治を語る上で避けては通れない
大悪党が暴れまわる梟の森みな殺しの夜・・・


大悪党を演じるのはあの”蟹江敬三”
さて、その大悪党っぷりとは・・・
氏名 徳永清一 (とくなが せいいち)
年齢 35歳
出没地域 山梨県富士松井田駅周辺、梟の森など
性格 極悪非道、冷酷無比。かなり狡猾。
結構根に持つタイプで昔逃げられた女に復讐心を燃やしている
(徳永から逃げる女もなかなか凄い;)。
しかし所々にユーモアを感じる悪党なのです。
家族構成 不明
徳永清一の
身体データ
面構え
 眉毛は濃く、太くつりあがっている。眼光は鋭い。
鼻の下とアゴにうっすらと無精ヒゲを生やしている。まさにワルのお手本!
服装
●戸久田家殺害時●
 まさに本物!と思わせる服装。これぞ手斧に合った服装とはこのことでしょう。
頭には手拭のはちまき、上は半袖の白いTシャツで袖が少し長め。サイズも全体的に大きめ(胸元にボタンが付いているもの)。腹にはラクダ色の腹巻。下はおなじみのだぶだぶのズボンに地下足袋をはいている。完璧!また犯行時には軍手着用。
 最高のファッションセンスです。
梟
●戸久田家殺害以後●
 戸久田家から盗んだ長袖のYシャツに長ズボンでベルトは無し。

●駅前の一杯飲み屋(2回目訪問時)●
 服装は「戸久田家殺害以後」と変わっていないが、麦藁帽子を被っている!
これがまたとても似合っている。
相棒 ”あらき かねお”(市川好朗が演じている)
相棒というよりも舎弟に近い。徳永を兄貴と呼び犯罪の手助けをする根っからのワル。
昔から盗み、婦女暴行を働いたらしい。出身は富士松井田なので土地カンがある。
徳永清一とは関東刑務所で親しかったらしい。
殺人歴 東京の質屋「武蔵屋」
 関東刑務所出所直後、一家4人殺害し、現金200万円を奪って逃走。
一人は奇蹟的に一命を取りとめた。単独犯。
その後、全国指名手配となる。
戸久田家殺害
 武蔵屋の3ヶ月後”あらき”と共に戸久田家の結婚資金を狙って、夜襲。
5人殺害。残る1人は”あらき”が殺害。(この家が梟の森にあるのです。)
もちづき家殺害
 山梨県警富士松井田署のもちづき警部補の一家殺害。被害者は嫁、子供2人の合計3人だが徳永もしくは”あらき”が何人殺したかは不明。”あらき”がもちづき警部補(河原崎長一郎さん演じる)に恨みを持っていたことからことに及んだらしい。
武器 手斧
拳銃・・・警察官から奪った2丁
殺人の動機 金を手に入れるためだけ(と思われる)。
季節 真夏
第218話での
人間関係
小田切警視
立花警部
津川警部補
中屋刑事
田口刑事
村井刑事
追う 徳永清一 ←共犯← あらき かねお
富士松井田署
もちづき警部補など
(刑事や警察犬)
→迫る→ 一杯飲み屋のママ
←←←通報←← のぶちゃん
現地の消防団
殺害
●質屋「武蔵屋」● ●戸久田家● ●もちづき家●
せつこ(妻)、つとむ(長男)、りさ(長女)
スイカ!  東京で質屋一家殺害し強盗殺人を働いたあと、刑務所仲間の”あらき”と共に梟の森にある戸久田家を襲い再び強盗殺人をやってのける・・・。

 騒がれぬよう一気にかたをつけるといい”あらき”に渇をいれる。
二人の間にほどよい緊張感が出るのかと思いきや、緊張しているのは”あらき”だけ。当の徳永は手斧を眺めながらとぼけた顔をしている。さすが本物の手斧使いである。この時点で普通の犯罪者と格の違いを見せ付けられる。

 画面は戸久田家正面が映っていて、中で惨劇が起っていると音と悲鳴でわかる。
しばらくして”あらき”がびびりながら出てきて地べたに座り込んでしまう。体は血だらけ。
そしてなぜか”すいか”を手にして出てくる徳永。
左手にすいか、右手に手斧、そして腹巻の中に札束・・・。すごい格好である。

 傍らに流れる小川に手斧を無造作に投げ捨てる。ゴミを捨てるが如く証拠品を放る。見つからない自信でもあるのか、指紋が検出されない自信でもあるのか表情からは全く読み取れず意図不明。
 そして両手ですいかを持ち上げ落下、すいかを地面で割る。
手斧を使わないところがまたいい。
 それを見た”あらき”は何を想像したか吐きそうになる。
徳永は喉が渇いただろ、食えと言いうまそうに破片をほおばるのであった。
まさか地面に落としたスイカを食べるとは思いもよらなかった、、、。またうまそうに食べるのである。まるで獣だ。

 奪った札束の一部を”あらき”に手渡す。しかし少ししかもらえないと不服を言う。が、徳永は俺は5人殺したんだ、と言いあっさりと却下される。
分け前は殺した人数で決まるとは知らなかった・・・。これが徳永流のやり方らしい。
指名手配!  駅へ着いた2人は列車がないことを確認すると各々別れて逃走することにした。
”あらき”は心細いらしく別れを惜しむが、徳永は涼しい顔をして別れる。
軽快に閉鎖された改札口を飛び越えホームへ侵入し、線路の上を歩く徳永。

 ふと前方に店仕舞いをしている一杯飲み屋を発見。
店仕舞いをするママと手伝いの”のぶちゃん(若い女の子)”がいる。

 そこへ喉が渇いてヒリヒリする、ビールを一杯だけ飲ませてくれといいカウンターに座る。あの面構えの人物にこう言われてはママも仕方ないだろう。
ママはビールを用意しようとする、がカウンターの内側に全国指名手配「徳永清一 35歳」強盗殺人と書いてある紙に目が止まる。
 ママは手も止まる。徳永はビールを早くくれと催促している。
ママは急いで警察への伝言を紙に書き”のぶちゃん”に手渡す。彼女は裏の勝手口から出ていった。
似ている!  ビールも実にうまそうに飲む徳永。ビールひとつとっても蟹江敬三の凄さが見て取れるのは褒め過ぎか?
ママにビールを注いでくれとせがむ。ママがビール瓶を掴んだ瞬間、徳永はその手を掴む。ママは反射的に引っ込めると徳永はあきらめた。意外とあっさりしている。

 ママがビールを注いでいる。その間徳永はじっと見つめ続ける。
ママは”のぶちゃん”に託した手紙を怪しまれているのではないかと思っているような表情をする。
だが徳永は昔の女に似ているなーなどと見当違いのことをほざきはじめる。
 この大悪党が女に逃げられたというのはおもしろい。そりゃぁ逃げるだろう。
 「とんだ女だった、巻き上げるだけ巻き上げて若い男と・・・」と語る。そして両手を組みボキボキと指をならし、ぶっ殺してやると言いものすごい形相になるのである。ママは震え上がるのであった。
タダ!  言いたいことを言った徳永は再びママの手を掴んで口説きはじめる。
このやりとりがたまらなくおもしろい。「梟の森・・・」の見所のひとつである。

 なあ、お互い一人暮らし、誰にも遠慮することない・・・金ならあるなどと言うとママは
バカにしないでよ、私はお金なんか・・・。といった瞬間!

「タダって言うのか!」

 とユーモアたっぷりの言葉を吐くのである。
勘違いなのか、故意なのかかなり笑える台詞。これが台本にある台詞なのかアドリブなのかすごく気になるところだが、とにかく徳永清一の個性を強く感じるシーンです。蟹江ならではの徳永清一。
6人!  口説いているともちづき警部補が入ってきて一杯くれないかと言う。
しかしママにかわってもうカンバンだなどと徳永は返そうとする。冷たいことを言うなよといった時、入り口と勝手口から5人の刑事が侵入し6人掛かりで徳永を捕まえる。実に大掛かりな捕物劇に徳永の凶暴さを実感した。普通、逮捕するのに6人も動員するのか?と思えるシーンであった。
とぼけすぎ!  富士松井田署の取調室。
この時点では梟の森の事件は発見されていない。

 もちづき警部補に取調べを受ける徳永。
懐から血が付着した札束を見つけた警部補はまたでかいヤマを踏んだな、というがとぼけた顔をしてしらばっくれる徳永。とてもいい表情。東京の事件はあっさり認めたが、梟の森の事件は語らない。

 そこへもちづきの上司が入ってきて殺しだ、かなりでかいヤマらしいと連絡に来た。
警部補はやはりおまえは踏んでいたなー!と迫ると徳永は

「知らないよ♪」

 としらばっくれる!とぼけ方が最高にうまい!面白い!
目を閉じ気味にしてアゴを引き、そして上へあげながら知らないよ、とかわいらしい声色で言ってのけるのである。やはり徳永清一、ただのワルではなかった。
 そのセリフを聞いた警部補は益々頭に血が上り徳永を連れて現場へ行くことになるのであった。これも徳永のワル知恵がなせる作戦なのだろうか・・・。結果はあとでわかるのだが・・・。
芝居!  梟の森の戸久田家に連れていかれた徳永は制服の警察官に監視されながらパトカーの後部座席に両手を手錠されたまま待っている。かなり暑いため汗だくになっていた。
 外を眺めていると、昨日投げ捨てた手斧が目の前の小川に落ちているのを発見!どうやら手斧を思い出したらしい。
徳永は警官を呼び、「おまわりさん顔を洗わせてくれない?」、とこれまたかわいらしい声でしおらしく言うのでまんまと警官は許してしまう。実に狡猾で芝居上手なのである。

 手錠をはめたまま小川に入り顔を洗う。せみの鳴き声が響いている。
辺りに気を配りながらそっと手斧を懐に隠す。
パトカーに戻ろうとしたその時、手斧の側面で警官を殴打。
もう一人の警官が威嚇発砲するが殴打した警官を人質としてとり、パトカーの運転を強要する。

 後部座席に警官と徳永。運転手も制服警官。
発砲音を聞いて駆けつけたもちづき警部補らは、徳永の車に押され側溝に片輪をはめて立ち往生しているパトカーを直すのに手間取っていた。
 そこへGメン(中屋、田口、村井刑事)がGメンの車で到着。もちづき警部補が徳永は車で逃げたと言うと警部補の同乗を無視しすぐに追走を開始した。
相棒!  Gメンと所轄の追走は失敗に終わった。
徳永一人では逃走は困難に思われたが、相棒の”あらき”の援護により見事逃げ切った。

 役に立つ相棒”あらき”は車で駆けつけて徳永を乗せて山奥へと逃走。
土地を知り尽くした相棒の働きは徳永にとってありがたいものだった。

 途中、逃走中の車を正面から映す場面があり、この時の二人の顔がとても良い。
逃げ切ったという勝ち誇った表情を滲ませ、二人揃ってニヤついているように見える。
二人の悪さをうまく表現するシーンであった。
警視、警部も
登場
 先の逃走劇で村井刑事が撃たれ重傷を負った。そしてGメンは犯人を逃したため小田切警視、立花警部、津川警部補もヘリコプターで駆けつけた。
 いかに徳永清一を捕まえることが困難かがわかる。さらに徳永には優秀な相棒までついているからやっかいであった。ここまでの状況から徳永は極めて稀なワルであることがわかってくる。
また殺害!  関東刑務所に”あらき”を送りこんだのがもちづき警部補だった。
”あらき”は恨んでおり以前取り調べの時も覚えていろ!と咆えていた。

 そんな”あらき”(徳永が実際絡んだかは話からは判明せず)はもちづき一家を殺害したのだった。
死体を見つめるもちづき警部補は気が動転していた。傍らにいた立花警部も怒りに震えていた・・・。警察にも’鬼’がいるのである。
発見!  逃走に使った”あらき”の車が山中で発見された。捜査は山狩りとなった。
空からは小田切警視がヘリコプターで、地上からはGメン、所轄、警察犬、地元消防団までが参加する大掛かりなものだった。

 山小屋を発見。取り囲む刑事たち。
正面から進んだもちづき警部補は一発、また一発撃たれ倒れた・・・。

 立花警部はライフルを撃つ”あらき”を発見、見事拳銃でヒットさせた。
襲いかかる”あらき”に蹴りをくらわせ徳永の行方を吐かせる。
答えない”あらき”に対して立花警部は”あらき”の負傷した右太腿部を足で踏みつける。
痛みに我慢できず徳永が一杯飲み屋のママの所へ行ったと吐く”あらき”。
立花警部はやっぱり鬼だったし、”あきら”もすぐに吐くだらしのないヤツだったことがよくわかる。こんな事で吐いてしまう”あらき”はまだまだあおいのである。いつまでも舎弟でしかいられないのである。まあ、あの立花警部はの鬼気迫るものがあったから仕方がないかもしれないが・・・。
居る!  所轄に通報した一杯飲み屋のママは徳永に恨みを抱かせていた。
店の準備をするママが裏の勝手口から出ようとしたその時!そこに立っていたのは麦藁帽子を被っていた徳永清一だった!鬼に麦藁帽子!さすが徳永ファッション!

 恐怖に怯えるママとのぶちゃん。
悲鳴を聞いて駆けつけた津川警部補は拳銃を構えた。すると人質に取ることはせず裏口から逃走したのだった・・・。 
何人?  全速力で逃げる徳永清一。追う津川警部補。
徳永は列車の操作場に逃げ込んだ。時、既に遅し。向こうからは小田切警視が、後ろからは津川警部補、そして駆けつけた立花警部たちと所轄たち。

 貨車の下に隠れ警官から奪った拳銃を発砲、小田切警視に撃たれ拳銃を失う。が、もう一丁持っていた。所轄の一人を撃ち昏倒させた。

 そして中屋、田口の動きに徳永は翻弄され弾を使いきる・・・。遠距離戦は苦手らしい。やはり得意の接近戦でなければダメらしい。

 操作場から広場へ逃げる徳永。
所轄の刑事が拳銃で撃とうとするがこれを立花警部が抑える。
そして立花警部は撃たしてくれーと叫ぶ刑事を押さえつけながら
「殺しては刑が軽過ぎる、法で裁いて死刑にしてやる!」
と怒りの言葉を放つのであった。

 武器を持っていない徳永はすぐに囲まれてしまう。
徳永は立ったまま下半身を3人に、両腕を3人に押さえこまれ正面から立花警部の怒りの拳を受ける。さらに両手に各々手錠が嵌められ、ようやく大悪党”徳永清一”は捕まるのであった・・・。
蟹の魅力
 蟹江敬三さんの名演技が鋭く光る見事な作品。
地方特有の所轄の縄張り意識における確執なども見事に描かれ、また追走劇も効果的な音楽と緊張感あふれるカーアクション、銃撃戦により迫力があり、見ごたえのあるものに仕上がっている。
また、手斧の効果はこのストーリーを印象付けるのに十分なほど強烈なものである。
 始まってすぐの惨劇は徳永清一の印象を強くアピールするには十分過ぎるほどのものだった。あえて画面には手斧を振りまわす絵はなかったが、全身血まみれの姿だけで全てを語れるものだった。
順序的には望月源治よりもこの「梟の森みな殺しの夜」が早く、第218話で放送されていた。
望月源治が初登場の「夜囁く女の骸骨」は第276話と随分後になってからの登場だった。

 徳永清一と望月源治には土地の設定が異なるものの、服装、性格、武器(手斧)など多くの共通点があり黒谷町を語る上で実に興味深いストーリーであることは間違いないだろう。
殺した人数を比べてみるのも面白いかもしれない。それにしても蟹江敬三の魅力たっぷりの作品であり、何度見ても面白い。敢えて言おう、これほど刑事ドラマで刑事の活躍が霞むほどの悪党が活躍する作品があったのだろうか?
みみずく
第218話の『梟の森みな殺しの夜』

プロデューサー
近藤 照男
樋口 祐三

構 成
深作 欣二
佐藤 純弥

脚 本
高久  進

音 楽
菊池 俊輔

エンディング
レクイエム

ささきいさお


出演者

河原崎長一郎
山口いづみ
蟹江敬三
市川好朗
近藤宏
山本清
近藤準
平田守
大友龍三郎
高月忠
志方亜紀子
田川勝雄
武田博志
山口正一郎
伊藤慶子

丹波 哲郎
TETSUROU TANBA

若林 豪
GO WAKABAYASHI

夏木 マリ
MARI NATSUKI

伊吹 剛
GO IBUKI

有希 俊彦
TOSHIHIKO YUKI

千葉 裕
HIROSHI CHIBA

夏木 陽介
YOUSUKE NATSUKI

ナレーター
芥川 隆行

撮 影
吉田 重業

監 督
鷹森 立一


273話『怪談・死霊の棲む家』
 長野県黒谷町シリーズ第一弾
立花警部と片桐ちぐさが出会う記念すべき作品
氏名 川田ひろゆき (かわだ ひろゆき)
年齢 20歳
出没地域 長野県黒谷町
性格 極めて凶暴。
頭に血がのぼると前後の見境がなくなり、あたかも魔物のようになる(鑑別所による)。
家族関係 実の母親ではなく後妻に育てられた。
この育ての母親に幼い頃虐待を受け、のちの成長に多大な影響を与えたらしい。
川田の身体データ 顔は肉付きがよく身体的にも太りぎみ。目は一重でその眼差しは気味が悪い。
犯罪歴 少年時代に2度、婦女暴行で捕まり鑑別所へ送られた。
武器 仏壇のロウソク立て
殺人の動機 なし(カッとなったため)
季節 夏 (8月下旬)
第273話での人間関係
きしもと亀造
↓目撃↓
立花警部
黒谷署
片桐刑事など
追う 川田ひろゆき →迫る→
(惚れた?)
片桐ちぐさ

目撃?
→殺害→ 植谷夫妻

虐待

目撃?
育ての母親 近所の子供
訪問  立花警部の捜査一課時代の上司、植谷治郎は5年前に退職し黒谷町で保護司として暮らしていた。再三の手紙による誘いに立花警部は訪問したが家には不気味な雰囲気が漂っていた。

 呼び出しのブザーを鳴らしても植谷家に反応はなかった。
不審に思った立花は玄関まで近づいた。が、そこには曇り硝子が嵌めこまれた木の扉は何物かに割られており、しかも血が付着していた・・・。
惨殺  立花は交番勤務の警察官を呼びに行き、立会いのもと家の周りを調査したが扉は全て閉まっていた。玄関の扉に不審な紙が貼ってあった。立花が先ほど訪れた時には貼っていなかった・・・。

 警察官は黒谷署に応援を要請し、合同で植谷家の捜査を開始した。
そこにはおぞましいほどの血が壁、床、台所、障子、あらゆるものに付着していた。
長年刑事を務めた立花もさすがにゾッとなるほどだった。凄惨な情景だった。

 死体はなかなか見つからなかったが、床下に不審を抱き畳を開けるとそこには見るも無残な植谷夫妻が並んで死んでいた。
出会い  死体を運び出し車に乗せようとした時駆け寄る女がいた。
片桐ちぐさである。
片桐刑事は立花警部にちぐさを紹介し、ここに初めて二人が出会った。

 立花曰く、植谷治郎はとても温厚な人だったといい、片桐刑事も口を揃えて恨まれるような人ではないと語った。そして植谷が再三立花に来るよう願ったのは片桐ちぐさを紹介するためだった。
植谷が立花を片桐ちぐさに逢わせたかったのだ。
検死  検死の結果、死亡推定時刻は8月20日(水)と断定。だが、聞きこみをするうちにおかしな目撃証言が多発する。
 植谷家の近所の子供二人が8月21日(木)21時に植谷夫妻を見たと言う。また、片桐ちぐさも家の前に夫妻が立っているのを見たと言う・・・。

 捜査会議では犯行時刻の決定は科学捜査が基本という考えから検死による推定時間で捜査を進めることになった。
不審者  検死の結果がまだでない頃、一人の不審者が上がった。

きしもと亀造(丹古母鬼馬二さん演じる)前科3犯の男だった。鼻の下にはヒゲを生やし、顎にもヒゲをたくわえ胡散臭さは十分だった。立花と片桐刑事は取り調べを行ったが”きしもと”はしらばっくれて事実を語らなかった。
手がかり  捜査の唯一の手がかりは”きしもと”だった。
胡散臭さを感じた立花と片桐刑事は尾行した。

 川にかかる木製の橋の上。
”きしもと”は女と会い、いい金づるができたと言い、植谷を殺したホシを見たと得意げに語った。
橋の下で聞いていた立花らは”きしもと”に駆け寄り全てを吐かせた。
米穀店  立花が交番に警察官を呼びにいった時、入れ違いで”きしもと”は植谷家を訪問した時だった。
そして”きしもと”が笹の葉をくわえズカズカと庭に入っていくとなにやら玄関に張り紙をしている人物を目撃した。その人物は川田米穀店と書かれた軽トラックに乗って去っていった。

 死体の発見を遅らせるため張り紙を貼ったらしく、川田米穀店の川田ひろゆきがホシであることがほぼ確定的だった。
幼児期  川田ひろゆきは生みの親ではなく、後妻の母親に育てられた。
寝小便などをするたびにその親に暴行を受た。幼い頃ひどい虐待を受けて育った。

 川田は中学を卒業すると東京へ出たがしばらくして黒谷町に戻ってきた。
東京にいた頃の足取りを黒木警視正が調べじきじきに黒谷町の捜査本部に参加した。

それによると・・・
2度婦女暴行を働き鑑別所送りになっていた。鑑別所の証言によると川田は極めて凶暴、かっとなると見境がなくなり暴力を振るうという。その姿は魔物のようだと。
勘違い  8月22日の昼間、川田は植谷家の庭で洗濯物を干す片桐ちぐさを見つけた。
タバコの火をくれと迫り、ちぐさはマッチをもってきた。が、手渡した瞬間、川田はガバッと両手ごと握った。焦り、怯える片桐ちぐさ。諦めて帰る川田。なんとも不気味で挙動不審な男だった。

 その夜、川田は片桐ちぐさに会いに植谷家を訪れた。片桐ちぐさが植谷の娘と勘違いしたのだった。
川田はいきなり玄関の硝子を割り、慣れた手つきで鍵を開けて侵入。
不審に思った植谷治郎は言い寄ったが川田はカッとなり傍にあったロウソク立てで何度も殴りつけ死に至らしめた。それを見つけた婦人も同じく滅多打ちにあい、死亡。なんとも悲惨な最後だった。

 川田の心理は正常とは思えない状態であり、勘違いを反省することなく相手を攻撃するという異常手段をとったところに川田の怖さを感じた。
証拠  状況証拠はあっても決定的な証拠がなかった。そこで立花らは片桐ちぐさに囮とし、川田をおびき寄せた。案の定、川田はついてきた。片桐ちぐさが植谷家の殺害について聞くと川田はあっさりと恐ろしいことを語るのだった。

 生きていてもイイ目に会う訳が無い。
 人間一度は死ぬ。
 蟻を潰したのと同じだ。


などと無表情のまま淡々と語るのだった。
因縁  語り終えた川田はちぐさに襲いかかる。ちぐさは必死に逃げた。そして立花と片桐刑事が現れ挟みうちにした。勝ち目なしとみた川田は墓地に向って走った。追いかける二人の刑事。
と、その時川田は足を石に引っ掛けジャンプ、お塔婆に胸から飛びこみ櫛刺しになって死んだ。
 その墓は植谷家のものだった・・・。
灯篭  夜の河原。
立花警部と片桐ちぐさは灯篭流しを行った。
植谷夫妻の冥福を祈って・・・。

 二人揃ったシーンはこれから起る数々の凄惨な事件を全く感じさせない、実に穏やかで微笑ましい光景だった。
コメント  幼少期に受けた虐待が及ぼすという現代社会にもあてはまる構図であり、その点では古さは感じない。
 「キレル」などという言葉が当時はなかったが、まさにその言葉があてはまるのが川田ではないだろうか。親からは愛情のかけらも享受できず、歪んだまま喜怒哀楽の表現さえも失ってしまったようだ。
 愛情不足が婦女暴行という行動に走らせたと考えるのはそうはずれてはいないだろう。

 また、犯罪を隠そうとする行為も川田に認められる大きな特徴の一つでもある。
畳の下に死体を隠したり、妙な貼り紙をつける行為は現実逃避の顕著な例ではないだろうか。
「梟の森みな殺しの夜」に登場する大悪党、”徳永清一”と比較すると犯行後の行動に大きな違いがあることがわかる。また、それによって川田特有の異常性がはっきりしてくる。
 徳永清一の場合は死体を隠したりはせず、そのまま逃走するという大胆な行動をとる。
金を奪うために殺す。
一方、川田はカッとなっただけで殺してしまう。殺人そのものを隠そうと必死になる川田は全くその動機が違うのであった。


 無表情の川田。片桐ちぐさはその美しさ故に不気味な輩、川田に目を付けられてしまった。
偶然、ちぐさが植谷家に居たがために夫妻は惨殺された。片桐ちぐさの周りでは不幸が多く多発する。
片桐ちぐさの持って生まれた運なのか、それともほかに要因があるのだろうか。
黒谷町シリーズ第一弾ではまだその答えはでない・・・。

 「怪談 死霊の棲む家」は幽霊が登場する珍しいストーリーでもある。
あまりにも非現実的なことを「Gメン」で扱うことはなかなか果敢な試みであったのだろう。
当時は「心霊」「幽霊」「怪奇現象」などメディアでも多々とりあげられ、夏になると
特集番組(新倉イワオ氏出演など)が組まれるご時世だった。


 このような非現実的な事象に対して科学捜査を基本とする立花警部や片桐刑事も
その存在に苦慮する。普段とは別の刑事のようだ。
 捜査記録に幽霊の目撃証言を記録するか否か。
立花は不可思議な現象として記録の片隅に記しておこう、と述べている。
幽霊によって死亡推定時刻が定まらなかった訳だが、まさか刑事たちがそのような事で苦慮するとは意外だった。
 本作品、黒谷町シリーズ第1弾はシリーズの中でも異色である。
個人的には疑問符がたくさんつく作品であまり好みではない。
やはり第2弾以降、数作品が「黒谷町」なのである。
第273話の『怪談・死霊の棲む家』

プロデューサー
近藤 照男
樋口 祐三

構 成
深作 欣二
佐藤 純弥

脚 本
高久  進

音 楽
菊池 俊輔

エンディング
遥かなる旅路


ポプラ



出演者

島かおり
中野誠也
陶隆司
中島葵
江角英明
丹古母鬼馬二
福田妙子
今西正男
田川勝雄
谷本小代子
小池栄
山本緑
山口正一郎
小山昌行
山田光一
小甲登枝恵
武田博志
藤木武司
島袋京子
吉田博喜
成田誠
飯塚仁樹
井上邦道



丹波 哲郎
TETSUROU TANBA

若林 豪
GO WAKABAYASHI

伊吹 剛
GO IBUKI

宮内 洋
HIROSHI YUKI

千葉 裕
HIROSHI CHIBA

中島 はるみ
HARUMI NAKAJIMA



ナレーター
芥川 隆行

撮 影
内田 安夫

監 督
小松 範任


276話『夜囁く女の骸骨』
黒谷町史上に残る悪党「望月源治」初登場!
大悪党を演じるのはご存知”蟹江敬三”さん
その悪党ぶりは・・・
氏名 望月源治 (もちづき げんじ)
年齢 30歳(作中で誕生日を迎える)
出没地域 長野県黒谷町
性格 極悪非道、冷酷無比、自己中心的、狡猾、残虐、凶暴
 精神鑑定によれば
一、些細なことで爆発するタイプ
二、人間的な同情、哀れみの心が欠如しているタイプ
 の二つの側面を持ち合わせる獣のような輩
家族構成 両親、妹(交通事故で死亡) (←276話で判明。源治の証言による)
源治の身体データ 面構え
 顔は浅黒く、眉毛が太くつりあがっている。鼻の下とアゴにうっすらと無精ヒゲを生やしている。
いつも鋭い眼光を放っている。
服装
●普段着●
 肌に密着した地味な肌着(駱駝色?)、その上に和風な上着を羽織っている。
腹には腹巻をしていて、足袋をはいている。
●仕事中●
 黄色いヘルメット、白いランニングシャツ。
相棒 ”ぬまた ひろし”(市川好朗さんが演じている)
 よく源治と飲み屋でつるんでいたワル。また仕事(ドカタ)も共にしていた時もあった。
犯罪者としてはまだまだ源治ほど凶悪ではない。
絞殺し、手斧で頭をかち割る源治にそこまでしなくても、などと言うほどまだまだあおい。
相棒というよりも利用され続けただけかもしれない。
第276話での殺人歴 OL殺し 2人(”ぬまた”と共犯)
ハイカー 1人
女性 2人
武器 手斧、ひも
殺人の動機 本能?
季節
第276話での人間関係
片桐ちぐさ
黒木警視正
襲う
立花警部
おおまち刑事課長
など
→捕まえる→
←恨む←
望月源治

→殺害→





→殺害→
OL×2
ハイカー
×1
女性×2
(合計5人)
片桐刑事 ←殺害←

利用

共犯
ぬまた ひろし
骸骨  留置所でうなされる”ぬまたひろし”。
OL殺し容疑で取り調べを受ける"ぬまた"は何かに異常に怯えていた。
夢に出てくる骸骨に怯えているのか、それとも共犯の存在に怯えているのか・・・。
だが、死体を埋めた場所は自供したのだが、共犯の存在は決してはかなかった。

 "ぬまた"は留置所で再びひどくうなされた。
看守は独房の外の洗面所へと連れ出した。
そして隙をみて看守を洗面器で数回殴りつけ脱走に成功する。
飯だけ!  一本杉の駐在所から通報があった。それは農家のおばあちゃんの話によると炊飯器の飯だけが食べられたというのである。他に被害はなくただ米だけが食べられたという滑稽な被害にあった。
 通報を直に受けた”おおまち”刑事課長のリアクションがとても面白い。
「なに!めしだけ食ってった!」
"ぬまた"の不自然な行動と”おおまち”の過剰な反応がおもしろい場面だった。
手斧!  黒谷署の刑事らは現地へ急行した。
一列になって進む最後部を歩いていた片桐刑事は釣り橋を渡りきったところで目に入る光線に気づいた。
不自然に思った片桐刑事は列から一人離れ様子を伺った。
 その瞬間、斜め上方から手斧が振り下ろされ肩に直撃、続いて頭部に直撃。
片桐刑事はなにものかの手斧によって殺された。

 そして片桐刑事の手には拳銃が握られていてそれが火を吹いた。
するとそこにいた"ぬまた"の胸に命中。"ぬまた"もそこで生き絶えた。
登場!  黒谷署の刑事、立花警部、そして片桐ちぐさたちは片桐刑事が殉職した付近にいた。
そこは山の中で木が生い茂っている。
すると片桐ちぐさはその前方に何物かの存在を確認した。
刑事らは駆け寄ったがそこには誰もいなかった。

 ほど近いところに山小屋があった。
”おおまち”、立花警部が中に入るとそこには飯を食べる前科3犯の望月源治がおとなしく座っていた。

”おおまち”が付近で起きた事件について尋ねると茶碗を投げつけ裏口から逃走、あっけなく刑事らに捕まる。腹が満たされていないのでスタミナ不足だったのかも。

 この時食べているものが気になった。
画像が暗くて謎なのである。
七輪でなにか焼いて食べているのだが不明。
源治が食物を買うとは思えないので付近で捕まえた魚かなにかなのだろうか。
凄い生活をしてそうな家の雰囲気だった。
飯の時間!  取調室。
”おおまち”と立花警部が取り調べている。

源治は黙秘を続ける。
が、口を開いたかと思えば腹減ったなー、などとほざく。
そして大声で飯の時間はとっくに過ぎてるんだ!飯持って来い!と物凄い剣幕で叫ぶ。
その気迫に”おおまち”も少したじろぐほどだった。
芝居!  源治の小屋から殺されたOLのアクセサリーが発見された。
勝ち誇るように叩きつける”おおまち”。

だが源治はあくまでもしらばっくれる。
"ぬまた"にもらったんだ、などとかわいらしい事を言う。

 そして「痛、痛たたたた、」などと芝居をうつ。
二人の優秀な刑事もてこずるほどの源治。さすが源治、大物である。
再び芝居!  留置所で飯を食う源治。
外から眺める”おおまち”、立花警部たち。

頭が痛かったんじゃなかったのか!と”おおまち”。
言われてあたたたた、と頭に手をやる源治。

 ”おおまち”は憤慨し、看守に飯を中断させようと命令。
中に入った看取は源治に捕らえられ、もみ合いになる。
援護に数人の看守が入りようやく押さえつけることに成功。
暴ん坊から飯を取り上げるとここまで怒り狂うのだった。
取り調べ!  再び取調室。
”おおまち”は自供させようと必死。
だが望月源治は証拠があるなら出してみな、と余裕たっぷり。
が、”おおまち”は源治の頭を掴み机に叩きつけた。

逆上した源治は卓上ライトを掴み”おおまち”に襲いかかった。
頭部に直撃し一ヶ月の負傷。
源治はあまりにも異常な行動をとるため精神鑑定を受けることになった。
ケモノ相手に”おおまち”くんは油断し過ぎたようだ。
目!  精神鑑定を受ける源治。
検査室にはベッドに仰向けになる源治。
ガラス越しに医者と立花警部。

源治の顔には多くの電極がつけられており、なぜかおとなしくしている。
が、目だけは元気でギョロギョロと異常な動きをしていた。
本能的に警戒心が働いているのだろうか。

 医者によると脳には異常は見られないとのこと。
このような犯罪者には2つのタイプがあると説明。
源治はその両方にあてはまるという。
いかに異常な犯罪者であるかが検査でも判明したのだった。
まあ、検査しなくてもわかりそうだが。
誕生日!  片桐刑事の初七日。
立花警部は源治を片桐ちぐさの家へ連れていった。
仏壇の前で立花警部は片桐刑事のことを源治に聞いた。
源治は知ってるとも!俺を3回もパクった奴だと興奮気味に叫んだ。
ひどく中傷する事を言う源治に平手をくらわせる片桐ちぐさ。勇敢だ。

 立花警部は源治を説得する。
片桐ちぐさのために話してくれないかと控えめに諭す。

 すると源治は語り始めた。
俺にも妹がいた。二十歳の祝いに盗んだハンドバックをあげたら引っ叩かれたと。
その妹だけがもう悪さをしないでと刑務所まで面会に来てくれたと。
源治は涙ぐむ(ほとんど芝居、話も信用できるかどうか怪しい)。
その妹は交通事故で死んだと言う。
 そして明日は俺の30歳の誕生日だ、二人で祝っちゃくれないかねー、などととぼけた顔をして言う。
親から今まで祝ってもらったことが無いという。

 誕生日と言えば赤飯と相場が決まっていると面白いことを真面目な顔をして言う。
赤飯、お頭付きの魚、卵焼き、うまい漬物が欲しいと源治はほざく。

30歳の誕生日を赤飯で祝えば思い残すことはないとしゃあしゃあと源治は言った。
立花警部がそうしたら全部話してくれるのかと聞くと頷いた。んん、怪しい返事だ。

 源治は確認するように赤飯、焚いちゃくれるんかねー、と言う。
片桐ちぐさに注目が集まる。
少しの間の後、片桐ちぐさは
「お赤飯、、、炊きます。」
と了承した。

立花警部は仏の前で望月源治を明日、前面自供に追いこむと心の中で誓った。 
鬼!  取調室。
立花警部と手錠を外した望月源治。

片桐ちぐさが作ってくれた弁当を頬張る源治。
源治のためにお茶を入れる立花警部。
見事に平らげた源治にタバコを差し出す立花警部。

 OL殺しから話を聞こうかと取調べを始める立花警部。
が、源治は赤飯ぐらいでパラパラしゃべると思ってるのかと鬼のようなことを言い出す。
おもむろに机の上の空になった弁当箱を蹴り、床で何度も踏みつけた。まさに鬼。
人の心をもたない源治。恐るべし。

 立花警部に怒りが込み上げる。
兄のためにつらい気持ちで作ったものを、よくもその心をこけにしたな。
許さねー、と冷静に語るが当の源治は背を向けて椅子に座り外を眺めている。


遂に源治の座る椅子を足で払う。椅子から落ちる源治。

 怒り心頭に達し止められないほどになった立花警部。
源治の顔面をおもいっきり数発殴る。吹っ飛ぶ源治。

源治は獣のようなうめき声を発しながら頭から突進してくる。
受けとめた立花警部は源治を壁に押し付け殴る。

何度も何度も殴りつける。
その姿は源治が鬼なら立花警部も鬼になっていた。

源治が反撃できないほど凄まじいものだった。
その音を聞きつけてか、駆けつけた刑事ら数人が入ってきて二人を押さえた。
が、二人は物凄い形相となって押さえられながらも顔を接近させ睨み合う。

源治はぶっ殺してやると叫び続けながら連行された。
 残った立花警部は息を切らしながらも怒りが止まぬようだった。
立花警部をここまで怒らせ、息を切らせるとはやはり源治は一筋縄ではいかない
ヤツであった。
また芝居!  黒木警視正が片桐ちぐさの家に来た。
立花警部は望月源治から自供が取れるのかと聞かれると静かに首を横に振り、いえ、と言った。

 一方、留置所の源治。
頭が割れるように痛いと喚いていた。
源治の素行を知らない看守は独房の中に入り源治に近づいたが、もちろん源治の芝居。

看守は殴られあっけなく昏倒。
鍵を奪われ逃走。
目の前に立ちふさがる看守もすばやい身のこなしであっけなく倒し脱走に成功したのだった。

源治の看守をするならもっと学習しておかなくては看守が務まらないのは
火を見るより明らか。
ライオンの檻に無防備で入るようなものだ。
饅頭!  夜。
墓地に着いた源治はお供えの饅頭を食った。
食べられそうなものかそうでないか、即断がつくらしい。
源治はいつも食欲旺盛。

 そしておもむろに墓石を動かすとそこからはなんと手斧が現れた。
警察もまさか墓石の下に隠しているとは思わない。
なかなか知恵もあるようだ。
決着!  闇夜に光る手斧。源治は片桐ちぐさの家を襲った。

布団に入っていた片桐ちぐさは不審な物音に気づき、玄関へ行くと外からガラスを割り、鍵を開けている人物も目の前にした。
驚き逃げる片桐ちぐさ。別の扉の鍵を開け出ようとした瞬間、源治に捕まってしまう。
が、指に噛み付き怯んだ隙に片桐ちぐさは表へと逃げた。
それを追う源治。
 直後、二人の間に立ちふさがる男がいた。
立花警部だった。

 源治は手斧で軽く威嚇し、裏山へと逃走。追う立花警部。
知り尽くした山の中へ逃げた源治は身を潜めた。
地の利を活かした戦いを知っている源治。
ワル知恵だけは相当長けている。


慎重に探す立花警部。
足元には小川が流れている。

 ふと立花警部の頭上から源治が手斧を切りつけてきた。
まさにケモノ。
右上腕部を切り裂いた。
拳銃は手を離れ岩場に落ちた。
襲いかかる源治、必死にかわす立花警部。

   {この戦いは手に汗握るほどの緊張感があり見ごたえ十分。
    後の何度か回想シーンで用いられるほどの場面。}

 対峙する二人。
源治はOL殺しについてはいた。

  「一人殺すも二人殺すも同じだ」
などとまさに鬼のようなことを喚いた。
ワルの名言である。

 圧倒的に不利な立花警部は額も切り裂かれる。
腹ばいになった立花警部に襲いかかる源治に石を投げつけ怯んだ隙に拳銃を取り戻す。
拳銃は源治の右腕に命中し手斧が落ちた。

 源治を小川に押さえつけ馬乗りになる立花警部。
源治の口に銃口を突っ込む。
源治は唸っている。

立花警部は拳銃で何度も殴りつけ自供させた。

  手斧で片桐刑事を殺し、片桐刑事に拳銃を握らせその手を"ぬまた"に向け射殺。
  うるさい刑事は死んだ、OL殺しも死んだと実に狡猾な行動をとる源治だった。


遠くから黒谷署の刑事たちが駆けよってくると立花警部はその場で気を失い、仰向けに倒れた。
源治もその場を動けなかった。

いかに物凄い死闘だったかがわかる。
報告  両脇を刑事に押さえられパトカーに乗せられる源治。
片桐ちぐさの方を見てなぜか口を大きく開けたまま何か言いたそうな顔をしていた。
こういう仕草が脚本にあったかどうか確かめたくなる。
もしかしたら蟹江さんのアドリブかもしれないからだ。


 そして二人の刑事の両肩を支えられ歩いてくる立花警部。
それを見た片桐ちぐさが駆けよる。
片桐刑事に犯人は逮捕したとご報告くださいと必死に伝える。

 涙を流しながら抱きつく片桐ちぐさ。
血を流す立花警部も疲れきった、もの悲しいなんとも複雑な表情で遠くを見つめていた。
コメント  当時、黒谷町シリーズと言えば望月源治と言うほど強烈なだった。
蟹江敬三さんが演じる悪党がいかに凄いか堪能できるものが本作品。
さら〜っと観ても楽しいし、じっくり細部まで堪能しても楽しい作品。
傑作である。

 蟹江敬三さんの凄い演技あっての源治だろう。
 風貌、口調、しぐさなどなど悪党の真髄を知ってるかのような演技に魅了される人は少なくないはず。動機が単純、行動も単純であることも悪党の魅力の一つではないだろうか。

 人間から理性をとったらこうなるのではいか、というのがもしかしたら望月源治なのかもしれない。
複雑な動機の背景もない。
思うがままに動くところが見ていておもしろい。
正しくケモノのようである。いやケモノである。


 どこが悪党か、どこがほかの悪党と違って凄まじいのか。
その理由の多くが魅力となっているのは確かだろう。

 この「夜囁く女の骸骨」で源治は数々の印象深い場面が多くある。

 例を挙げればまずは手斧でカチ割る理由を言ってのける場面だろう。
絞殺した死体にさらに手斧でとどめを刺すのは首を絞めただけじゃ息を吹返すと"ぬまた"に説明するところである。
これは正に源治のワルたる確固たる証拠。
この説明を聞いた"ぬまた"はびびってしまうほどだった。
この理屈について行ける犯罪者はそうはいない。

 片桐家での誕生日の場面
源治は心にも無い事をぬけぬけと語るその様は感服。
片桐ちぐさ、立花警部さえも巧みに騙すその語り口調、声色は実に見事。
兄を殺したかもしれない源治本人がちぐさに赤飯を作らせてしまう。
それぞれの思惑を把握し、それを逆手に取り自分の都合の良い方向へ話を進める狡猾さが恐ろしい。

 源治は食欲旺盛
なにかと食する場面が多く映る。
取り調べで飯の時間が過ぎているだけで凄まじい形相で怒り狂ったり、目の前に食い物があればそれがお供え物だろが、なんだろうが食べる。

先の誕生日の芝居も赤飯を食べたいがためにうったものかもしれない。
 また、一話を通じて食する場面がいかに多いかということからもよくわかる。
第281話「夜歩く魔物の花嫁」でもそれが顕著であり、魔物共通の特徴かもしれない。
 理性なしで本能のまま生きる魔物は欲を満たすためには必死なのであり、そのためには何でもするのである。

 一人殺すも二人殺すも同じ
 実にシンプルでわかり理由。
魔物の理論は単純明解なのである。
これを意識して黒谷町シリーズを見ると魔物の共通点であることがよくわかる。
凶悪になればなるほどこの理論が成立する。
 そのため相棒でも利用できる時まで利用し、その後自分の都合の良いように抹殺をもためらうことはない。
自分以外は全て道具と同じなのである。


 Gメンの中でもいろいろと形容される立花警部。
望月源治と唯一やりあえる刑事なのである。
所轄の刑事ではとても手に負えない。
その立花警部さえも傷を追わずには捕まえられないのが源治なのである。

 手斧と拳銃。
手斧は圧倒的に不利であるが、源治はその点を克服して立花警部を苦しめる。
魔物が山に多いのは隠れやすいという理由があるからではないだろうか。
だから黒谷町が山の中という設定と考えることもできる。
地の利を活かす・・・まさにケモノ。
生き抜く知恵が備わっていて、実は相当高い知能を持ち合わせているのかもしれない。

 第285話「満月の夜女の血を吸う男」。実質この話の続編。
次なる望月源治の活躍は?立花警部は、片桐ちぐさは・・・。
黒谷町シリーズ傑作中の傑作である望月源治編。

 放映当時幼い視聴者にも多大な影響を与えるほどの犯罪者がいただろうか。
本物の悪党と呼ぶにふさわしいのが望月源治なのである。
第276話の『夜囁く女の骸骨』

プロデューサー
近藤 照男
樋口 祐三

構 成
深作 欣二
佐藤 純弥

脚 本
高久  進

音 楽
菊池 俊輔

エンディング
遥かなる旅路


ポプラ


出演者

島 かおり
中野 誠也
蟹江 敬三
江角 英明
武知 杜代子
市川 好朗
徳弘 夏生
今西 正男
河合 絃司
宍戸 久一郎
井上 昂
相馬 剛三
武田 博志
山口 正一郎
小山 晶行
関田 恵子
青山 礼子
樫村 まゆみ
佐藤 達郎


丹波 哲郎
TETSUROU TANBA

若林 豪
GO WAKABAYASHI

伊吹 剛
GO IBUKI

宮内 洋
HIROSHI MIYAUCHI

千葉 裕
HIROSHI CHIBA

中島 はるみ
HARUMI NAKAJIMA

川津 祐介
YUSUKE KAWAZU

ナレーター
芥川 隆行
撮 影
内田 安夫

監 督
小松 範任


281話『夜歩く魔物の花嫁』
黒谷町史上異色の個性派悪党「しまだとらお」!
演じるのは”粟津號”さん

ちぐさに襲いかかるわけありの悪党”とらお”

それを死守する立花警部・・・
その結末は・・・。
氏名 しまだ とらお
年齢 35歳
出没地域 長野県黒谷町
性格 わがまま、なまけもの
家族構成 しまだぎいち(父)、きよ(母)、えいじ(次男)、ときえ(”えいじ”の嫁)と長男とらおの5人家族
とらおの身体データ 小太りで頭はスポーツ刈り。口周りともみあげにヒゲをたくわえている。
前歯2本はいつも露出していて、闇夜でもキラリと光るほどの前歯(銀歯)をもつ。(闇夜では目と前歯が光るのです。)
 昔、きのこ狩りに行った時、母親に誤って崖から落とされ頭を強く打ってからおかしくなったらしい。手斧握るよりも散弾銃が似合う。
第281話での殺人歴 父親と弟夫婦の3人(おらは長男だ。この家はおらのモンだと言い、至近距離から射殺)
武器 散弾銃(押入れに隠してある)
殺人の動機 ちぐさを嫁にできなかったこと。単純!(とらおの嫁になる女など、世間を探してもどこにもおらんぞ!と父に言われて決意が固まったらしい)
季節
第281話での人間関係
片桐ちぐさ 守る

助けを求める
立花警部

対決

ひとめ惚れ
しまだ とらお 殺害 父親と
弟夫婦の3人
迷惑?
殺害を躊躇

かばう
きよ
予感  Gメン本部で夜勤で詰めていた立花警部はちぐさが何者かに殺される夢を見た。
立花警部はこれをちぐさの身に危険が近づいていると危険を察知。
そのころ悪い予感通り、ちぐさの身に危険が迫っていた。
夜襲
 Gメン本部から立花警部はちぐさの家に電話をかける。
丁度そのとき何者かが片桐家の玄関をこじ開けている瞬間だった。
家には電話の呼出しのベルがけたたましく鳴り響く。玄関のこじ開ける音は一時止まる。立花警部が黒谷署に応援を頼んだため幸いちぐさに被害はなかった。駆けつけた”おおまち”刑事課長もほっとした様子。だが暗闇から柿を食いながらその様子をじっと見ているものがいた。

夜襲した何者かは証拠を残していた。柿を食い、じか足袋を履いていた・・・。
”とらお”といえば・・・柿・・・
ここで暗闇の中、とらおのアップになりサブタイトルが赤い文字で表示される。
これは純粋な黒谷町シリーズでも唯一赤い文字で表示されたサブタイトル。
薄っすらと暗闇に映るとらおの目と血をイメージしたと思われる赤い字のサブタイトル表示はインパクトがある。スタッフの意気込みが他の黒谷町シリーズよりもあったのだろうか。あの望月源治が登場する二つの話でさえサブタイトルは白かった。
 漆黒の暗闇、とらおの白い目、赤い文字。
なんとも不気味なオープニングで恐怖を感じさせる雰囲気が出ていて良い。
若鶏  立花警部がちぐさの家を訪れたのは亡くなった片桐刑事の四十九日の前日。
ふたりが縁側のそばで座っていると”しまだきよ”が食料をもって登場。のちに立花警部の印象に残ったちぐさの手料理、「若鶏の鍋」の材料を運んできたのが彼女だった。

 この登場シーンがなかなかおもしろい。
昨日片桐家を襲った何者かが履いていたのが「じか足袋」。そして片桐家をバックに”きよ”の足元がアップで映るのだった。
昨日襲った犯人とダブらせて視聴者に「きよが犯人では?」と思わせる狙いがあったのだろう。


 母は立花警部の素性を知るとそそくさと退散。若鶏のお代ももらわずに帰ってしまう。確かに挙動不審だ。”きよ”は怪しい?
闇夜  その夜、ちぐさは鍋の準備をしていた。
ふとちぐさが外に何者かの視線を感じ凝視すると闇の中に何者かを発見し驚く。
立花警部が表へ飛び出すとすでに誰もいなくなっていた。
 ちぐさは他のストーリーでもそうだが、こういった気配を感じる能力に長けているようだ。
黒谷町の悪党に目をつけられるヒロインは終始怯えていなくてはならないのだろう。なんといってもとんでもない悪党だらけなのだから、黒谷町は。
惨劇  立花警部とコロを連れたちぐさは兄の墓参りの途中若鶏のお代を払うためしまだ家に立ち寄った。が、そこには凄まじい惨劇の跡が残されていたのだった。
 庭には殺された犬の死体、そして人の血を思われる跡が。
立花警部は家の中で起った惨劇を察知し、所轄の応援を頼む。

 家の中に入った立花警部らが見たものはおびただしい血痕だった。
人体にこれだけの血があるのかと思わせるほどの血の量だった。
だが現状には死体がなかった。
足袋  立花警部らが小川で死体を運んだと思われる大八車を発見した頃、ちぐさはコロを連れて墓参り。
 ふとコロがコスモスの咲く草むらへと走り出した。
追いかけるちぐさ。と、さらにその背後に忍び寄る足袋を履いた何者かの気配が忍び寄った。手には散弾銃が・・・。
しかし、何者かの顔は映らない。いったい誰なのだろうか。

 コロが地面になにか見つけたようだった。
ちぐさがその場所を観察すると地面から人の手が出ていた。
思わず悲鳴をあげ、その声をたよりに立花警部が到着。
この時忍び寄る人影はすでになかった。
魔物
 コスモスの咲く草むらでちぐさは立花警部に訴えるようにして語った。
「どうして私はそんなおそろしい魔物のような犯人に狙われなくてはならないのでしょうか」、と。

 黒谷町シリーズで命題のようなセリフ。ちぐさが美人であることが災いしているのだろうか。ちぐさは悪党好みの女性なのかもしれない。一方、立花警部にも好かれていなければ今ごろ魔物の餌食になって生きてはいなかっただろう。ちぐさにとって立花警部はかけがえのない存在であった。
コスモス
きよ  立花警部とちぐさは境内に隠れていた”きよ”を発見。
 ”きよ”は走り去り立花警部たちから逃げる。
そして流れの急な川に飛込み逃げようとするが立花警部の必死の追走により捕らえられる。
 ”きよ”は終始「死なせてくれー、死なせてくれー」と呟き続けた。

 ”きよ”は”おおまち”刑事課長と立花警部の取調べを受ける。
”おおまち”の強い口調の尋問に”きよ”は頑なに「自分が殺した」と言い張る。
だが、立花警部はやさしく”きよ”に話かけ説得するように質問をすると供述を始めるのだった。
さすが立花警部。
相手を見て的確な方法で取り調べる様はさすが場数を踏んだ立花警部といえた。
 鶏小屋の中で座り卵を食べるとらお。
仕事もせずにぶらぶらとしているとらおに母”きよ”は働けと言うがとらおは全く聞く耳もたない。お前も35だで嫁をもらわにゃいかんじゃろが、と言われるととらおは急に目の色が変り興味ありげ。ほんともらってくれるか、とその気になる。
(このときの表情が面白い!)
母はもらってやると約束をしてしまう。
これがそもそも事件の発端だったのだろう。

 ふたりは野菜や果物を積んだ大八車でちぐさの家にいった。
後ろから大八車を押すとらおはご機嫌!

 ”きよ”がちぐさとやり取りしている間とらおは少し離れた大八車の傍らでむしゃむしゃと果物を頬張り、目はちぐさに釘付け。
母が戻ってくるや否やとらおは

「いい女だ、オラの嫁に決めた」

と勝手にちぐさを嫁に決めてしまう。凄いぞとらお!
話もしていないのに決めるとらおは一目惚れだったようだ。
だが母はとらおに品の良いちぐさを紹介するなど考えてもいなかったらしく、とらおの気持ちに焦りを感じ、困惑する。

 ちぐさは黒谷町でもかなり品の良い人物なのかもしれない。
家族  しまだ家の食事中のこと。
とらおは嫁をもらうことを父や弟に自慢げに語る。
弟の嫁”ときえ”よりもべっぴんだとにやにやしながら自慢をする。
この時のとらお!すごくおもしろい表情をしてるのです。

 だが父と弟はばかにしたような目をしてとらおの言う事を信じていない様子。
とらおは刑務所を出たり入ったりしているので既に両者の間には溝ができていたようだ。

父:「とらおに嫁がくるっていうのは本当か」と母に向ってきく。
母:「なあ、とらおよ。嫁のことは忘れてくれや」と懇願するように言う。
不思議そうな顔をしてとらおは
「どうしてだ、かあちゃん」
ときく。(この時のとぼけた表情も最高!子供のようなとぼけたツラ)

「女に断られたのよ」
とすかさず弟がキツイ一言を言い放つ。(ああ、とらおが怒ってしまう・・。)

とらおは半信半疑の様子で
「本当か、かあちゃん」
と、きくと母は黙って首を縦に振った。

「ちくしょう、あのアマ」
と、怒りを露にして逆恨みをするとらお。
とぼけた顔から一気に鬼のような形相になる。
アゴを上に向けると自然と柔らかい表情になる粟津號さんの演技。
ひとたびアゴを引き上目使いをすると全く違った表情になるからすごい。

「とらお!とぼけたことを言うのは止めろ」
「お前の嫁になる女なんか、世間を探してもどこにもおらんぞ」
と、よせばいいのにはっきりととらおに向って父は言いきる。
とらおの堪忍袋が膨らむのが手に取るようにわかる。

「とおちゃん、なにもそこまで」と母。
父を鋭い目つきで睨むとらお。

追討ちをかけるようにして弟が一言
「この家は全部俺のもんだからな、わかったな」
とどさくさに紛れて言ってはいけないことを断言してしまう。

とらおは魚(めざし?)を食いながらとぼけた顔をして
「長男はおらだ、おめーら夫婦は出ていけ」

それからよせばいいのに父はトドメを刺すようにして

「おまえのような恥じっさらしにこの家を渡せるか!」

するととらおは怒り爆発、さあ大変。
徳利をこたつに叩きつけてこたつをひっくり返し、家を飛び出す。
呼びとめる母の声はとらおには届かなかった・・・。


暗闇にきゅうりをかじりながら座り込むとらお・・・。

「ちくしょうー、みんなでおらをバカにしやがってよ」
「オラは長男だぞ。この家はみんなオラのもんだぞ」
と、闇に向ってつぶやく。
確かに長男だけどねぇ。。。

わがままなとらおはまるで子供のようだった。
ここまでくるともう止められない状態。
きゅうりをかじりながら囁く様はまさに魔物のようだった。

母”きよ”の証言によると幼い頃母ときのこ狩りに行った時、誤って崖から落ちて頭を強く打ったのだった。それからとらおは変わってしまったと。

身体は大人でも中身は子供のようだ。
こうなったのも不運としか言えない。
親の不注意でおかしくなってしまったのだから。

母はおそらく責任を感じていたのだろう。
父や弟は不幸にしてワルになってしまったことを受け入れていなかったのかもしれない。
笑顔  夜寝静まったころ、とらおは箪笥から散弾銃を取り出す。
物音に気がついた父。
とらおは至近距離から射殺。血まみれの父。

 泣いてとらおにすがる母。
だが、とらおには母を殺すことはできず、振りきって2階に駆け上がる。
障子を開けるとそこには弟夫婦が。近寄り夫婦を射殺。
「ざまあみやがれ、オラをバカにしやがってよ」
仕留めたあと勝ち誇ったように声を出して笑うとらお。
寒気のするような不気味な笑顔だ。

 とらおはバカにされると我慢ができないようだ。
そもそも我慢強い性質ではない。
そこへきて嫁がもらえるという楽しみがもろくも崩れ去り、さらにバカにされるといったことではとらおの性格からいってああいった行動にでるのはあたりまえ。

 父、弟にバカにされ次第にとらおの表情に怒りが現れるところは細かな心理描写がすばらしくこの話のみどころといってもいい。

追討ちをかける父の発言に見ている方はヒヤヒヤさせられるのだった。
案の定、というか予想通りというかとらおは爆発してしまうのだった。
念仏  母”きよ”取調室で自供した。
とらおが3人を射殺。後始末は全て自分が行ったと。

 ”きよ”の回想シーンでのこと。
大八車に死体を載せ、鈴を鳴らしながらもの哀しい歌を唄いとぼとぼと歩く。
崖から落した自分の過ちを悔いるかのように哀しい歌声が闇に響くのだった。
印象的なシーンだった。

 母は立花警部に事の顛末を全て語った。
とらおのきのこ狩りの不幸な事故を泣きながら語る母。
直るようにお百度参りもしたと語る。

「それから変った子になっちまってなー」
と鼻をすすりながら残念そうに語る。

「刑事さん、おら死にてー、ひとおもいに死にーてーだよ」
と泣きじゃくるのだった。

普段熱い”おおまち”刑事課長もおとなしく自供を聞いている。
もちろん立花警部もうまく聞き手にまわっているのだった。

立花警部はとらおの行方を尋ねるが”きよ”は答えず念仏を唱え始める。
もうこれ以上語らなかった。
”きよ”は固く口を閉ざしたのだった。

と、そのとき取調室にちぐさからの電話がかかってきた。
立花警部が話始めると電話の向こうでなにやらちぐさが何者かに襲われた様子だった。
立花警部らはちぐさの家に急行するが既に誰もいなかった。
連れ去られた後だった。
立花警部と対決  片桐家の裏山。とらおはちぐさを裏山に拉致した。

 とらおはちぐさに向って銃を突きつける
とらお:「おめえのせいだ、みんなおまえのせいだぞ」
ちぐさ:「私がなにをしたっていうの」
とらお:「おめえがオラの嫁になればこんな事には」
などとめちゃくちゃな事を言うと、ちぐさは心底驚いた様子で
ちぐさ:「私があなたの嫁に?」

「おらはそう決めたんだ」
と、またまたとんでもない事を言うとらお。無茶苦茶です。

困った顔をしてちぐさは言った
「私には好きなひとがいる。立花警部よ!」
「立派な刑事さんよ!」

と、とらおの神経を逆なでするかのように強い口調で言い返した。

「よりによってデカになんか惚れやがって!ちきしょう!こうなったら皆殺しだ!ひとり残らずぶっ殺してやる!」

とおもいっきり唾を飛ばしながら発狂する。
もう、止められないほど熱くなっているとらお。

 だがとらおはいざ散弾銃を構えちぐさを殺そうとしてもなぜか躊躇する。
冷酷無比な悪党ならばあっさりと射殺するところだが、とらおは違った。
とらおにとって嫁の存在は大きかったのかもしれない。
母と嫁の話をしたときの笑顔は満面の笑みだった。
それほどうれしかったのだろう。
ちぐさに心底惚れていたのかもしれない。
ちぐさの美貌が数々の悪党を呼び寄せているのかもしれない。
一方、その美しさ故に簡単には殺されないという事も考えられる。


 躊躇している間に立花警部らは近づいてきた。
とらおは刑事たちに向けて銃を乱射。
打ちながら脳裏に家族惨殺の回想が重なる。
撃ちまくっている隙にちぐさは山の奥へと逃げる。
追いかけるとらお。
下からは必死に追ってくる立花警部。


 岩がごろごろしている山の緩やかな斜面でとらおはちぐさに追いついた。
とらおは散弾銃を片手にちぐさをかかえて岩陰にひそみ立花警部が来るのを待つ。
とらおたちの前を通り過ぎた時、その背後に飛び出すとらお。
立花警部ピンチ。
拳銃を捨てさせ、圧倒的有利になったとらお。
怒りをこめて

「死ね!デカ野郎!」

と、喚き散弾銃を発射!
その瞬間ちぐさが横からとらおの銃に飛びつき弾はそれる。
しかし怒り狂ったとらおはちぐさの顔面を散弾銃で殴る。
そしてちぐさを射殺しようとするが立花警部の拳銃が火を吹きとらおの散弾銃は吹っ飛ぶ。

 のた打ち回るとらお。
とらおは散弾銃を立花警部に狙いを定めた。
が、立花警部の動きが一瞬速く散弾銃は蹴り上げられ銃は吹っ飛んだ。
ふたりは揉み合いになるが百戦錬磨の立花警部にはかなわず、圧倒的な強さの前にとらおはただもがくだけ。
飛び道具がないとだめらしい。


 右肘で腹に肘打ちをくらい、さらにおもいっきり左手のパンチをくらい倒れるとらお。
それでも起きあがろうとするとらおにトドメを刺すように立花警部は右足で顔面に回し蹴り。かなり痛そう。とても演技には見えない蹴り。

ここですでにとらおは戦意喪失に近い状態。

立花警部は地面に抑え込み両手に手錠を掛けた。
とらおはついに動くけなくなった。


 接近戦が不得手なとらお。
コロコロした図体には愛嬌があるのです。


 ちぐさは立花警部を救った。
そのためちぐさは視力を失った。額の痣が痛々しい。


ちぐさを抱きしめながら立花警部のナレーション・・・
「ちぐさは命をかけて私を救い、そのため視力を失った。
私は生涯彼女を離すまいと心に固く誓った」



とらお  とらおは非常に個性的なキャラクターです。
とぼけた面構えで憎めない顔つき。
働かず、食物ばかり食べている・・・どうしようもないヤツ。
腹が減ったらそこらへんの食い物をほおばるとらお。
281話では何度もそんなシーンがあります。
柿をうまそうに食ったり、生卵、生野菜をむしゃむしゃ食べるのです。
この時のとらおの表情がなんともいいがたい面構えをしていて特におもしろいのです。

 だけどなぜか好感を抱かせるものがあって好きである。
独特のキャラクターであるとらおを演じる粟津號さんにしかできないでしょう。
悪党の中でもお気に入りのキャラクターです。

 しぐさ一つ一つがなんともいえないオリジナリティーがあるのです。
喜怒哀楽の表現の仕方がとらおならではのものですごくおもしろいのです。
喜んだかと思えば気に入らないことになるととたんに怒り狂ったり、発狂する。
蟹江敬三さん演じる望月源治や小林稔侍さん演じる悪党と比べて狡猾ではないのですが、そこがまたとらおの個性であり、愛嬌があって好ましいところなのです。

 悪ガキがそのまま大人になったようなとらお。
自分の感情に素直に行動しすぎるとらお。
なぜか300話以上もあるGメンの中で強烈に印象に残ったのがとらおだったのです。

第281話の『夜歩く魔物の花嫁』

プロデューサー
近藤 照男
樋口 祐三

構 成
深作 欣二
佐藤 純弥

脚 本
高久  進

音 楽
菊池 俊輔

エンディング
遥かなる旅路


ポプラ


出演者

島 かおり

本間 文子

粟津 號

江角 英明

灰地 順

徳弘 夏生

日野 道夫

南 祐輔

荒川 保男

丘 みさお

宍戸 久一郎

山口 正一郎

武田 博志

小山 昌幸

佐藤 達郎


丹波 哲郎"
TETSUROU TANBA

若林 豪
GO WAKABAYASHI

伊吹 剛
GO IBUKI

宮内 洋
HIROSHI MIYAUCHI

千葉 裕
HIROSHI CHIBA

中島 はるみ
HARUMI NAKAJIMA

川津 祐介
YUSUKE KAWAZU

ナレーター
芥川 隆行

撮 影
内田 安夫

監 督
小松 範任



285『満月の夜女の血を吸う男』
「望月源治」再び登場!
演じるのはもちろん蟹江敬三さん
今回の活躍、いや暴れっぷりは・・・
氏名 望月源治 (もちづき げんじ)
年齢 30歳
出没地域 長野県黒谷町
性格 (第276話参照)

2話分を総合すると・・・
 極悪非道、冷酷無比、自己中心的、狡猾、残虐。

 ちなみに源治の性格を表わすものとして2つある。
ひとつは裁判所でおおまち刑事課長が望月源治の凶悪ぶりを説明。
「5人を絞殺し死亡したのちさらに手斧にて頭部を殴打。また犯行を隠蔽するために共犯の同僚も手斧にて殺害。さらに片桐ちぐさの兄片桐刑事をまたもや手斧にて殺害。まれにみる凶悪な男」
と、おおまち刑事課長の刑事生活の中でも類を見ないほど凶悪なのが源治だった。
 そしてもうひとつは立花警部が黒木警視正に対して望月源治を覚えていますかとの問いに
「ああ、あの魔物のような男か」
と、記憶に残るほどの人物なのです。
源治の身体データ 第276話とほぼ同じ。

 顔は浅黒く、眉毛が太くつりあがっている。鼻の下とアゴにうっすらと無精ヒゲをはやしていて悪党の見本の様な面構え。
服装がこれまた胡散臭く、腹には腹巻をしていて、足袋をはいている。どうやら足袋は黒谷町の悪党ご用達らしい。また、腹巻は手斧を収める役割も果たしている!
第285話での殺人歴  ”まつぬまたいち”とおおまち刑事課長を手斧で殺害。
地蔵堂で発見された焼死体も源治の仕業と思われる。
武器 手斧(もちろん盗んだもの!買うわけないね)
殺人の動機 ”たいち”殺害はその姉”きくよ”をだますため。
おおまち刑事課長殺害は自分が生き延びるために殺害。
地蔵堂の焼死体は自分が死んだと思わせるため殺害。
季節
第285話での人間関係
立花警部 守る

助けを求める
片桐ちぐさ

捕まえる

殺意
おおまち刑事課長
殺害
望月源治
襲う

利用

信頼
まつぬ
まきくよ
はじまりはじまり  いきなり手斧で立花警部が斬られるシーン!
視聴者は釘付けになります。んん、すごい導入の仕方だ。
しかも源治は
「ざまぁみやがれ!立花!」
と吼えている。
どんな展開になるのかワクワクさせられます。
構成の妙ですかね。

 また、サブタイトル出現のシーンもこれから始まる雰囲気を
見事に表現していて素敵。
名場面その1 裁判所のシーン
 第276話において犯した罪の裁判に被告として望月源治が座っている。
証言台にはおおまち刑事課長がいる。

そのおおまち刑事課長は源治の凶行、残虐性などをとつとつと語るのだが当の源治は聞いているのか聞いていないのかわからなツラをしている。

おそらく片方の耳から入っては片方から出ていく、そんな感じ。

完全にとぼけている。大物だ。

おおまち刑事課長だけが熱弁を奮っているのであった。
 源治の落ち着きを払ったふてぶてしい態度はとても印象に残るシーンのひとつだった。
名場面その2 源治の芝居

 裁判が終わり源治の女”きくよ”の弟である”まつぬまたいち”と源治は護送車に乗るところだった。
すでにたいちは乗車している。

源治は護送車の入り口のステップに足をのせた時

「あた、あいたたたた・・・」
(このシーンはかなりお気に入りです;)

と、頭を抱えひどい頭痛を訴える。

係官が近づいたその瞬間源治は襲いかかる。と、同時に車の中からたいちも飛び出し係官を蹴散らす。

運転席に係官ひとりを人質に取りたいちと源治は護送車で逃走したのだった。
 この時の源治の仮病。名芝居をやってのける様は一級品。
係官も騙されるのだった。
この芝居は源治のキャラクターを印象付けるのに十分過ぎるほどのもので名場面のひとつ。

 芝居はこれだけでは終わらず、ひとりの女さえも見事に騙してしまう。
それはきくよである。

 警察不信のまつぬまきくよは源治の女で脱走した際に訪ねた時も心配していたとその心の内を打明けていた。

 きくよが弟のたいちの様子を心配する様子をみて源治は大芝居をうった。
きくよの警察不信、弟を思いやる気持ちを察してそれを自分に利用できるように騙すのだった。
 たいちの死を前に自殺を図ろうとするきくよを制止する源治。
ただ単に良心からとめたのでは間違ってもない!
利用できなくなるから、の一点のためだけだからだ。
 女の心の隙間に土足で入っていくようなのが源治なのだ。
 おそるべし源治。


 源治が語るその内容には視聴者も騙すような工夫もあり、実に面白い。
今回の第285話は望月源治の”芝居”が終始光るストーリーである。
係官は騙す、女は騙す、警察をも騙すのだから。
名場面その3 きくよ
 警察不信のまつぬまきくよ。
不幸な女で頼るのは源治しかいなかった。
彼女の警察不信になった理由には警察の強引な捜査、乱暴な警察の姿があった。その警察のために弟と共に哀しい不幸な人生を送ることになった。

 そんな彼女に目を付けたのが源治。
頼れるものがないきくよにとって源治は次第に心のよりどころになりつつあった。自然な成り行きだったのかもれない。
それがきくよにとって幸か不幸かはわからない。

 たいちの死因を立花警部から聞かされたきくよ。
源治のやさしさが芝居であったことを立花警部から聞かされてもきくよは
「警察よりも・・望月を信じる・・・」
と、涙流しながら語る姿は哀しいものがあった。
そこにはひとりの不幸な女の一生を見た気がした。
名場面その4 ちぐさ
 目の治療を受けて入院している片桐ちぐさ。
以前、とらおに殴られ目が見えなくなっていた。
望月源治が脱走したことにより立花警部は黒木警視正の命令でちぐさのもとへと駆けつけた。

 ちぐさが診察を終え病室に入ると人の気配が。すると窓際に立つ立花警部がいた。その声に近づくちぐさ。
「毎日、毎日あなたの事ばかり」
と、立花警部に語りかけるのだった。
 魔物に狙われるちぐさ。それを守る立花警部。二人の間にはすでに強い絆が築かれているようだった。
名場面その5 立花警部と望月源治の壮絶な戦い

 立花警部は黒谷署刑事たちと捜査をしていた。
そのころ望月源治はきくよを使ってちぐさを誘拐した。
立花警部が黒谷病院に到着した時には既にベットにはちぐさの姿はなかった。

 探しまわる立花警部。
ふと病院の裏手にちぐさの履物を発見。そこから墓地を駆け抜けちぐさを探した。と、目前にきくよが立ちはだかる。
 立花警部はきくよに残酷な事実を打明け、説き伏せちぐさを追った。

 裏山。採石場のような草も生えないようなところ。
 望月源治は手斧を片手に片桐ちぐさを人質に立っている。
遠くからその姿を見つけた立花警部。源治もその姿を見つけた。
源治:「待ってたぞ立花っ!」
ちぐさ:「立花さん危ない来ないで」
立花警部は拳銃の弾丸を抜き取りその場に捨てる。
そして無言のまま一気に源治のところまで駆け上がる(この際にかかる音楽がまた良く、タイミングもぴったり)。いよいよ対決である。

 立花警部の予想通り源治は拳銃を投げろと要求。
立花は源治の方へ投げた。
ちぐさは源治の手から逃れようとするがだめだった。
源治は手斧を首にあて一筋の傷をつけた。赤い血が痛々しい。
そしてニヤける源治(この笑み!最高です!)。
初めて見せる笑顔だった。とても不気味。けど素敵。


立花:「なんのためだ」
源治:「決まってるだろ、お前の命が欲しいのよ。お前をブチ殺してやりたいのよ!あの時のお返しに!」

 立花を無防備にさせ拳銃を奪った源治は
「目の見えないこの女によ。お前がひいひい泣いて命乞いをする声を聞かせてやりたいのよ」
立花:「撃つんなら撃て」
源治:「死ねー!立花!」
と、叫び引き金をひく。
しかし、拳銃には弾が入っていない。カチッ!カチッ!と空しい音が響く。
その瞬間、立花は猛然と体当たりをくらわせ、源治を後方へ飛ばした。
(Gメンのテーマが流れる♪)

素手の立花と手斧をもった源治の壮絶な接近戦が繰り広げられる。
立花は幾度か手斧によって負傷する。
逃げるちぐさ。
それを追う源治。
傷を負った立花は追いつけない。

 源治は手斧をちぐさに振り下ろそうとした。
立花:「望月!ちぐさには手を出すな。殺すならこの俺を殺せ!」

源治の手は静止しもの凄い形相で


源治:「ばかやろー!おめーは女に甘めーなー、
    未練がましいことをいうんじゃねー」
    「俺にとっちゃ女なんつーのはただの石ころよ」


立花:「望月。貴様のような奴を信じてる女もいるんだ」

源治:「きくよか、あのバカ女」
    「おめーをブチ殺すためにちょいとやさしくしてやっただけよ」
    「きくよなんて女はもうご用済みだ!」
    「女なんざゴマンといらー!」


 まさに鬼!まさに源治!悪魔である(笑)。
源治の本性現れています。名言連発。(源治語録集ができそうです。)
さすがの立花も嫌な表情を見せます。


 ちぐさに手斧を振り下ろそうとした源治に猛ダッシュで源治の手を押さえる立花。だが大腿部に手斧で傷を負う。
痛さに耐えられず地面に倒れる立花。
目標をちぐさから立花に変え襲いかかる源治。
絶体絶命の立花。

「ざまーみやがれ立花ぁっ〜!」
「死ねぇーー!!」


と、仰向けの立花に馬乗りになって手斧を振り下ろそうとした瞬間、
源治の動きがぴたりと止まる。


「グサ!」

きくよが包丁で源治の背中を刺したのだった。
ふたりは抱き合いながら崖の下に落ちていった。
ついに魔物は死んだのだった。

抱き合う立花とちぐさ・・・。


立花警部のナレーション
「一匹の魔物は死に果て、ひとつの愛はもろくも砕け散っていった
   今私に確かなもの、それはちぐさを愛する心だった」



「遥かなる旅路」が流れる・・・。
ああ、なんていいイントロ・・・エンディングなのだろう・・・。
源治について  20年数前の当時、Gメンと言えばこの作品が思い浮かぶほど
本作品は強烈だった。

 多感な少年期にこの作品を見たことで少なからず影響を受けたのは
間違いない。きっと同じような視聴者(被害者!?)もいたのではないだろうか?


 なにが強烈か?
やはり源治そのものである。
こんな人がいるの?ってくらい凄い個性。

第一にあの凶暴さ。
普通の刑事では逮捕できないほど凶暴な犯罪者ってGメン史上にいたかな?
って考えさせられるくらい凄い。

 警察側は飛び道具をもっているにも係らず接近戦用の手斧に負けるって
ありえないのに・・・鬼に金棒いや源治に手斧!は無双だ。圧倒的だ。

 当時は凶暴さばかり印象に残っているが最近ではあの恐ろしい
知能に関心する。
 俗に言う悪知恵である。
自己中心な源治が最も源治らしい才能が巧みに騙す話術と芝居である。
 中途半端な犯罪者には決して真似できないあの巧みさは恐ろしい
ほど冴えている。

 一方、こういった面が逆に源治の魅力になっているのはなぜなのだろう?
 一般的には勧善懲悪で、刑事が正義で犯罪者を逮捕する。
刑事=強い、犯罪者=弱い図式になるのだが、それをひっくり返しそうに
なるくらい強いから魅力があるのではないだろうか?
 あんな芝居を打てる犯罪者っていう点でも凄く魅力的。
 武器が手斧ってのも凄く好き。
 自己中心の理論がとても好き。

 それとやはり「蟹江敬三」さんが演じている点がかなり大きい。
蟹江敬三さん以外ではあの源治は生まれなかったと思う。
手斧を振り回す捌き方、その時の目つき面構えといったら凄い迫力。

 また、細部にわたってよく見ると細かい演技がとても楽しい。
源治の人間像が生き生きしてくるのである。
 例えばきくよの店に訪れる前に闇夜でくしゃみをするシーン。
ああいう細かい芝居がとてもいい。
 黒谷総合病院で外からちぐさを捕まえようとする源治の手つき。
獣みたいでおもしろい・・・等々いくつもある。

 望月源治・・・Gメン史上比類なき強烈な個性をもったヤツだった。

第285話の『満月の夜 女の血を吸う男』

プロデューサー
近藤 照男
樋口 祐三

構 成
深作 欣二
佐藤 純弥

脚 本
高久  進
小松 範任

音 楽
菊池 俊輔

エンディング
遥かなる旅路


ポプラ



出演者

島 かおり

蟹江 敬三

左 時枝

江角 英明

蔵 一彦

今西 正男

菅沼 赫

大木 正司

徳弘 夏生

井村 昂

坂井 寿美江

樋口 のり子

小山 昌幸

山田 光一

小笠原 弘

宍戸 久一郎

武田 博志

山浦 栄


丹波 哲郎
TETSUROU TANBA

若林 豪
GO WAKABAYASHI

伊吹 剛
GO IBUKI

宮内 洋
HIROSHI MIYAUCHI

千葉 裕
HIROSHI CHIBA

中島 はるみ
HARUMI NAKAJIMA

川津 祐介
YUSUKE KAWAZU


ナレーター
芥川 隆行

撮 影
内田 安夫

監 督
小松 範任



第290話『X'masカードの中の人骨』
望月一家の亀造登場!
悪党を演じるのは”志賀勝”さん
その悪党ぶりは・・・
そして本編から”かよ”が登場
氏名 望月亀造 (もちづき かめぞう)
年齢 不明
出没地域 長野県黒谷町
性格 大胆不敵、冷酷、狡猾
家族構成 源治の兄
亀造の身体データ 面構え
 短髪で顔は丸く、鼻の下に立派なヒゲをたくわえている。体格は源治よりも太っている。目つきは源治に劣らず鋭い。
服装
 ドカジャンを羽織っていて冬服の装備。そしておきまりの足袋をはいている。
相棒 女ひとり(飯場で知り合った)
第290話での殺人歴 黒谷署刑事3人と愛人
武器 手斧、トラック
殺人の動機 復讐
季節
第290話での人間関係
片桐ちぐさ

襲う
立花警部
→捕まえる→
←恨む←
望月亀造 →面倒をみる→
←?←
かよちゃん
黒谷署刑事 ←殺害←

利用

共犯
←殺害← 愛人
電話  目を負傷したちぐさは治療のため黒谷病院に入院していた。
その個室の病室に良く通る男の声で”源治”を名のりちぐさを驚かせた。
死んだはずの男からの電話はちぐさを驚愕させるに十分の迫力があった。
この知らせを受けた立花警部は急遽、黒谷町へと向った。
 あいまいな怪電話一本で立花が現地へ向かうとはちょっと
私情も含んでいるのか?
大胆不敵  亀造が復讐を誓う仇である立花に正々堂々と挑戦する腹のすわった男、それが亀造のやり方だった。
 立花の捜査能力を見極めたその手口はなかなか長けており、望月ファミリーの長男であることに納得がいく。

 大胆不敵、そんな形容があてはまるのが亀造。
ストレートに立花に攻撃をしかける態度に立花は思わず探りをいれるが亀造は冷静に受け答え、

 「ボイラーマンだ」

などととぼけたことをすんなりと言ってのけるところは実におもしろい。
胡散臭さいボイラーマンなのである。

 細い山道で立花をトラックで轢き殺そうとする亀造。
シンプルなその攻撃に立花は負傷してしまう。
そんな亀造の計算高い殺意には舌を巻く。
かよ  病院のちぐさのもとに絵本をもって訪れるかよ。
ちぐさに気に入られ、かよとの仲は微笑ましいものでここから絆が深まってくる。
 しかし、亀造はかよの面倒をみている間、「かよの父親の仇は立花」と教え続ける。

 亀造の育て親としての愛情とちぐさの人柄からくる愛情とが後にかよの心を動かす。
亀造に育てられたにしては随分としっかりした子に育ったようだ。
血統  亀造は源治と似ている点が多い。
それは望月家特有のもののようだ。

 まずは女。

源治の理屈によると前述のように女は道具。
この亀造もやはり同じだった。
利用するだけ利用した女はちぐさと比較され、終いには

「あばずれ女!おめえなんぞは月とすっぽんだ!」

などと酷い事を平気で言うのであった。
まさに望月家の男。血統が成すセリフ。


 次に復讐するその堅い意志。

 弟、源治を殺されたその恨みを晴らすべく復讐を実行する。
かよと山小屋に住み、そこには源治の位牌があった。
日々、立花への復讐を考えていたのであろう。

 最後に殺人の理屈。
何人殺しても同じというめちゃくちゃな理論が望月家にはある。
刑事を殺すことになんの躊躇いもない彼ら。トドメはアリバイのために刑事を殺してしまう(女が実行)、凄い奴。

 これらから望月家はがいかに執念深いのかが亀造から伝わってくる。
また、兄弟思いなのも特徴。

「源治の霊が浮かばれねぇ」
と勝手な思い込みで立花への復讐を遂行するのだった。
対決  黒谷町シリーズの特徴でもあるラストでの立花と悪党の対決場面。
亀造はちぐさを拉致、ダムで立花が来るのを待っていた。
いよいよ復讐の時。ちぐさを盾に立花に拳銃をダムに放らせた。


 次に亀造は立花に土下座を要求。
源治の位牌の前で土下座を強要。
ハラワタが煮え繰り返るような思いの立花。
手を強く握り締める立花。それを見た満足そうな亀造(笑)。
 この不気味な笑みも血をすする源治にそっくり。


 このダムは源治の遺骨を風葬した場所でもあった。
満足げに広いダムに向って死んだ源治に復讐を成功したことを報告。
「源治よ、みたか。仇をとったぞ!デカの立花がヒイヒイ泣いて頭を下げてるぞ!」
と、その時ちぐさは亀造の手に噛みついた。スキができた亀造に立花は位牌を投げつけた。立花と亀造は肉弾戦になりもみ合う。

 一方、目の見えないちぐさはふらふらと歩きダムから落ちそうになる。
そこにかよが遠くから走ってきた。
かよは今にも落ちそうなちぐさに辿りついた。
亀造はかよに
「手を放せ!突き落とすんだ!」
と叫ぶがかよの心はすでにちぐさに傾いていた。

 かよは必死でちぐさを引っ張り上げようとする。
立花は亀造をかわし、ちぐさのもとへ駆け寄る。
救い出すことに成功。

 そしてその時亀造が背後から手斧を持って立花に襲いかかる。
ひらりと立花はかわすと亀造は自らダムの下へと転落していった・・・。
 弟の源治と同じ死に方だったね、亀造くん。
亀造  どうしても源治と比較して鑑賞してしまう本作品。
いかんせん、源治のツラ構え、行動、言動、服装、武器、理念等があまりにも
凄すぎて彼を超えることは亀造には荷が重いというものだ。

 胡散臭さはなかなかのものだ。
どうみたってあんなボイラーマンはいないよ(笑)。
電話の声だけでバレバレ(笑)。

 源治が実は生きていたって展開の方がファンとしてはおもしろかっただろう。
で、兄弟揃って立花を襲う、って展開だったらさぞエキサイトな話ができあがっただろう。
第290話の『X'masカードの中の人骨』

プロデューサー
近藤 照男
樋口 祐三

構 成
深作 欣二
佐藤 純弥

脚 本
高久  進

音 楽
菊池 俊輔

エンディング
遥かなる旅路


ポプラ



出演者


島 かおり

志賀 勝

蟹江 敬三

絵沢 萠子

今西 正男

徳弘 夏生

石井亜希子

宍戸久一郎

樋口のり子

山田 光一

森 瞳子

武田 博志

小山 昌幸

佐藤 達郎


丹波 哲郎
TETSUROU TANBA

若林 豪
GO WAKABAYASHI

伊吹 剛
GO IBUKI

宮内 洋
HIROSHI MIYAUCHI

千葉 裕
HIROSHI CHIBA

中島 はるみ
HARUMI NAKAJIMA

川津 祐介
YUSUKE KAWAZU


ナレーター
芥川 隆行

撮 影
下村 和夫

監 督
小松 範任



296話『雪の夜の悪魔が生んだ赤ん坊』
ケモノの服を纏った悪党「辰男」登場!
演じるのは”成瀬正”さん
そしてその片棒を担がされる妖しげな”きしもとたみこ”を演じる”根岸季衣”さん
果たしてこのふたりの行方は・・・
氏名 はちや 辰男 (はちや たつお)
年齢 ?
出没地域 長野県黒谷町
性格 極悪非道
家族構成 源治、亀造の弟
辰男の身体データ 面構え
 顔は浅黒く、目は兄たちと同じく鋭い眼光を放っている。
服装
暖かそうなケモノの毛皮を羽織っている。
相棒 いしかわ まもる
第296話での殺人歴 きしもと たみこ殺害
武器 鎌(かま)、手斧
殺人の動機 復讐と金のため
季節 真冬
第296話での人間関係
立花警部
県警やの捜一課長
黒谷署刑事たち
→追跡→ いしかわ まもる 片桐ちぐさ

共犯

→捕まえる→
←恨む←
はちや辰男 →誘拐→
→追跡→

共犯


探す

→追跡→ きしもと たみこ →誘拐→
→救う?→
かよちゃん

愛人

望月源治
誘拐T
 ある真冬の夜、かよが高熱を出した。
みかんを食べたいというかよの願いを叶えるべくちぐさは吹雪舞う寒い中みかんを買出しに行った。
 辺りが真っ暗なので夜遅い時間かと思ったら、まだ八百屋(果物屋)が
営業していたのには違和感を感じた。
 黒谷の八百屋は24時間営業か?(笑)

出かける間際、家の付近に不審な女の姿があった。
黒い服を見に纏った怪しい女がいた。
 女版の源治か?と期待してしまいました。。。

 買い物を済ませ帰ってみるとかよの姿はなかった。
玄関のガラスが割られており、何者かに誘拐された可能性があった。
行方不明になったかよを探すために立花警部は黒谷町へと来たのであった。
似顔絵  ちぐさが目撃した女の似顔絵によって女の身元が判明した。
”きしもとたみこ”、望月源治の情婦でかよは二人の子供であるという噂があった。この事実を知った立花とちぐさはショックを隠せない。あのかわいらしいかよちゃんが魔物のような男、望月源治の娘というのはなんとも運命のいたずらともいえる残酷なものだった。立花とちぐさは我が子のように可愛がっていた。

 その後、に若い男から身代金の要求があった。
かよは誘拐されたのだった。
実の母親が娘を誘拐するといった奇妙なことになったのだった。

不審な男  現場一帯を捜査した結果、挙動不審者たちが署に連行された。
その中に”はちや 辰男”がいた。
 その目つきは他の怪しい男たちと明かに違って、鋭い眼光を放っていた。
目を付けた立花は取調べをするが決定的な事実は得られなかった。

 だが、辰男は気になる事実を口走った。
立花警部の噂を聞いたと。
それは魔物のような男たちを次々と葬り去ったと語った。

 取調べ中、再度若い男から身代金引渡しの電話があり、辰男はシロと断定され解放された。が、立花の刑事としてのカンが辰男の不審さに目を付けて捜査を続行した。

すると案の定、辰男は望月源治と関係があったのだった。
辰男はあの源治が暮していた山小屋に潜んでいた。
そこにはまたしても源治の写真が飾ってあった。
 それにしてもあの遺影はいつどこで誰が撮影したのか気になる。

誘拐U  般若峠で現金の受け渡しが指示された。
ちぐさが金をもって取引現場で犯人を待った。
刑事らはそれぞれ隠れて犯人の出現を待った。

 そしてホシが現れた。
ホシはちぐさから現金のバックを奪い、バイクで逃走。
追跡する刑事たち。
だが、途中刑事たちの車に挟まれたホシは道を外れ草むらに突入。

 事故を起して死んだ。
このホシの回りに集まった刑事たちはちぐさを現場に置き去りにしていた。
あせる立花。
だが、すでに遅くちぐさはあの辰男に誘拐されたのだった。

 源治、亀造と違って辰男は舎弟の男を利用した。だがその手口は兄たちと根本的に同じであり、利用できるものは利用するというやり方は同じ。
また、かよ誘拐を実行したきしもとたみこも辰男に騙されていた。
望月一家の得意な手口なようだ。

 
受け渡し  辰男は現金受け渡しには立花ひとりで来るように要求。
単身、立花は雪の積もる山へと走った。
そして遂に辰男と対峙。

立花は辰男に正体を聞いた。
すると辰男は

「弟だよ。望月辰男だ!わかったか!」

と、血を分けた兄弟をよくも殺してくれたなと凄む。
 かよの消息を辰男に聞くと

「てめえのガキでもないのにそんなに可愛いか」
と辰男が言ったが、立花は言いきった。
「かよは俺の子だ!俺の子供なんだ!」

 緊迫するふたりのやり取りが続く。
素手の立花に対し、おもむろに手斧を出す辰男。

立花:「なんの真似だ」
辰男:「兄貴たちの墓に誓ったんだ。てめえをブチ殺してやるってな」
立花:「貴様。女子供をだしにしやがって。来るんなら来いよ。」

と凄む。この迫力は見物。

それを聞いた辰男はあとずさる。
鬼気迫る迫力が立花にはあった。
源治よりも弱そうに思えたのか。

 両手に札束をもつ立花。
右手に手斧を携える辰男。
次第に近づき札束を奪おうとしたその瞬間、札束が辰男の顔面に直撃。
蹴りを入れた立花。
だが手斧の反撃を右大腿部にくらい、辰男は金をもって逃走。
負傷しながらも必死に追う立花。
足もとの残雪に滴る血が痛々しい。
 あの手斧での直撃を足に食らって歩ける刑事はなかなかいないだろう。
恐るべし立花警部。

うわ言  雪の中の山小屋。
高熱を出して眠っているかよ。
それを抱きかかえるちぐさ。そしてたみこ。
ちぐさはかよの身を案じる。

ちぐさ:「こんな可愛い子を見殺しにしてもいいの?」
かよ:「(寝言で)・・・おかあさん・・・おかあさん・・・」
動揺するたみこ。

 生みの母親を探していたのよ、と説得するちぐさにたみこの心は揺れる。
そしてかよを病院へ連れて行く事を決意したたみこ。
かよを抱えて家を出ていこうとした瞬間、辰男が入ってきた。

たみこ:「よくも騙したね!この子私が産んだ子じゃないか!私に誘拐させやがって!」
 「あんたたち兄弟はろくでなしだよ!」


もの凄い形相で睨む辰男。

たみこ:「私はかよを病院に連れていく」
 「かよ・・。私の子供だ・・・。死なせてたまるか!」


 手に鎌をもったたみこは辰男に襲いかかる。
その隙にちぐさはかよを抱え逃走。
辰男はたみこから手斧を奪い殺害してしまう・・・。

面会  たみこの回想シーン。
服役中の源治と産まれたばかりのかよを連れて面会をするたみこ。
 かわいいかよをひと目父親である源治に見せに来たのに源治の反応は
案の定、冷ややかだった。

 「俺の子供じゃないんだろ?」「別の男の子だろ?」
などととぼける源治。さらに、

「(子供)うるさくてかなわねぇ」「でぇーっ嫌いだ」

とほざく。
 そそくさと房に戻ってしまうのであった。
さすが源治。
血が繋がっている子を目の前にしてこの態度。
 やはり望月家の長男、源治だった。

救出  たみこを仕留めた辰男はちぐさを追う。
助けを呼ぶちぐさ。
遠くから立花が拳銃を手に接近。
それを見た辰男は逃げる。
立花は伏射の姿勢で辰男の足に弾丸を命中させる。
逃げる辰男。それを追う立花。

もみ合うふたり。
接近戦では圧倒的に強い立花。
源治たちに比べれば辰男は弱かった。
遂に望月家の血を継ぐ三男、辰男を逮捕、ちかくの廃墟に手錠をはめた。
かよと同じ苦しみを味わえ、と言い放ち立花はその場を去った。
辰男は寒い山の斜面に置き去りにされた。


かよを抱いたちぐさに立花は追いついた。
かよを背負う立花。それを支えるちぐさ。
無事に下山する3人の姿が白い斜面にぽつんとあった。
 早く病院に連れて行かなくていいの?と心配になる終わり方だった。

辰男  登場したシーンではもの凄い眼光を放っていて、期待が膨らんだ。
だが、所詮弟だった。長男源治には多くの面で劣っており、
迫力不足は否めなかった。
 手斧で立花に負傷させた腕前はなかなかだった。
だが、こう体から発する鬼気があまり感じられず、もの足りなかった。
 もう、源治以降はかなり見劣りしてしまうのは仕方の無い事かもしれない。。。

第296話の『雪の夜悪魔が生んだ赤ん坊』


プロデューサー
 近藤 照男
樋口 祐三

構 成
深作 欣二
佐藤 純弥

脚 本
高久  進

音 楽
菊池 俊輔

エンディング
遥かなる旅路


ポプラ



出演者


島 かおり

根岸 季衣

蟹江 敬三

成瀬 正

川合 伸旺

石井 亜希子

今西 正男

徳弘 夏生

大矢 兼臣

今井 久

相沢 治夫

伊達 弘

宍戸 久一郎

五野 上力

内藤 路代

石井 浩

立川 良一

杉山 孝志

佐藤 達郎



丹波 哲郎
TETSUROU TANBA

若林 豪
GO WAKABAYASHI

伊吹 剛
GO IBUKI

宮内 洋
HIROSHI MIYAUCHI

千葉 裕
HIROSHI CHIBA

中島 はるみ
HARUMI NAKAJIMA

川津 祐介
YUSUKE KAWAZU


ナレーター
芥川 隆行

撮 影
内田 安夫

監 督
小松 範任




302話『露天風呂に浮かんだ白い死体』
かよと仲良しのひろみの母、鶴丸みつよ
ちぐさは幼友達だった彼女の登場により苦悩する・・・
立花警部とちぐさの関係にヒビが入る
果たして揺れるちぐさの心は・・・
氏名 あかま とくじ
年齢 ?
出没地域 長野県黒谷町
性格 凶悪
家族構成 不明
とくじの身体データ 面構え
 顔は浅黒く、坊主頭。一見野蛮に見える。
服装
暖かそうなケモノの帽子を被っている。
相棒 根津儀平など
第302話での殺人歴 根津儀平、鶴丸みつよ殺害
武器 手斧
殺人の動機 復讐と金のため
季節 初春
第302話での人間関係
立花警部
かわの捜一課長
黒谷署刑事たち
→追う→ 片桐ちぐさ かよちゃん

助ける

懇願

助ける

仲良し
鶴丸たまえ
親子
鶴丸みつよ
親子
ひろみちゃん

対決

追跡、殺害

捕まえる
あかまとくじ
根津儀平
発見  保育園の手伝いをしている片桐ちぐさ。そこにはかよも児童としていた。
ある時かよと仲良しのひろみちゃんの元に額に傷のある怪しい女が訪ねてきた。名前を聞かれ、手を握られたひろみは薄気味悪くなり逃げ出す。それを追うかよ。園外に走り去る二人を見たちぐさは驚きあとを追う。
 温泉の湧く河原で二人に追いついたその時、上流からカバンが流れてきた。拾い上げるちぐさ。中を開けるとそこには人の腕が・・・。
立花警部  バラバラ死体の知らせを聞いた立花警部は黒谷町へ。
その死体は3ヶ月前、東京でGメンが担当した質屋強盗殺人(黒谷町シリーズには多い(笑))の犯人の一人だった。

 保育園を訪れた立花警部。再会を喜ぶちぐさ。
立花警部は東京に家を見つけたと報告。事件が解決したら住もうと話すとちぐさは満面の笑みを浮かべ
「この日が来るのをどんなに待ち望んだか。嬉しい」
と、喜びを現した。立花警部も微笑んだ。
アジト  バラバラ死体の根津のアジトが発見され、急行。そこには根津の生首が置いてあった。黒谷町シリーズには珍しく、ナマナマしい残酷なシーンだった。
 根津と共にいた女の似顔絵から、捜索しようとしたがちぐさがその素性をしっていた。ちぐさの幼友達だった。立花警部はその女、鶴丸みつよが現れそうな母親のいる黒谷演芸館を訪ねた。
 鶴丸みつよの母、たまえは女剣劇役者。立花警部がみつよの事を聞くと
「そんな子はいないよ」
などと、昔に縁を切ったと言いはる。
みつよ  ちぐさとかよが家の前でみつよと会った。みつよは今まで母親にかけた迷惑のせめてもの罪滅ぼしといい、札束を渡す様に頼んだ。ちぐさは困惑するがみつよの説得に折れる。ここらへんからちぐさの優しさが良く現れている。ちぐさはひとが良過ぎるのである。
直後  みつよが帰り、食事の支度をしていると立花警部がやって来る。捜査本部では重要参考人鶴丸みつよを探している、ちぐさのもとに来るかもしれない、連絡があったら知らせるように、と話す。ちぐさは先ほどみつよが来たことを言えずにいた。ちぐさは立花警部に嘘をついてしまったと後悔し、悩んだ。
再会  保育園で再びちぐさのもとにみつよが現れた。みつよは母と会いたい、取り計らって欲しいと頼む。しかし、困り果てるちぐさ。だが、みつよはちぐさの良心を把握しているのか、
「死ぬ前に一度でいいから会わせておくれ」
と頼む。断れないちぐさ。
対面  ちぐさはみつよの意志を伝えるため、母親のいる演芸館を訪れた。そこには張込みをする黒谷署の刑事が二人いた。ちぐさは嘘をつく。「立花警部からの伝言で、重要参考人の女のひとが捕まったと伝えて欲しい」と。
 刑事はちぐさを信じきっており、その場を去った。
ちぐさはまた嘘をついてしまった。

 ちぐさがみつよの真意を伝えるとたまえは縁を切った事を忘れ、表情を変え、驚いた。やはり血の繋がった親子は親子なのである。
ちぐさはたまえと共に湖のほとりにやってきた。
再会した母たまえと娘のみつよ。
汚い手段で稼いだお金なんか受け取れるかい!とみつよに冷たく接するたまえ。泣き崩れるみつよ。ちぐさはたまえにみつよの体が悪く、先が短い事を打ち明けるとたまえは豹変。どうしてもっと早く戻って来なかったんだ、と声を荒げる。
 みつよは再会できたのでちぐさとの約束通り自首すると言った。だが、たまえはちぐさに見逃してほしい、逃げて体を直すんだよ、とちぐさを困らせる。
あかま  ちぐさが困り果てていると、みつよの男あかまとくじが登場。みつよはあかまらが奪った金をカスめて母親に渡したのだった。あかまは裏切りに怒りを燃やし手斧を持って参上。
 襲いかかるあかまに対してたまえが受けて立つ。
だが、敵うはずも無くあっけなく手に取った木の棒も折れる。
襲いかかるあかまを抑えようとしたみつよは振り下ろされた手斧によって頭を強打される・・・。
叫ぶたまえ。そして叫びながら逃げるちぐさ。
あかまはちぐさを追った。だが、あかまは落ちている金をいくつかしっかり拾うところが情けない(笑)。所詮、小物の悪といった感じを受ける。

 足場の悪い湖のほとりだったのでちぐさはつまずいてしまった!
襲いかかるあかま!
そして振り下ろされる手斧!
そこで銃声が響き渡る。

立花警部の拳銃が火を吹いた。(Gメン’75のテーマが流れる♪)

転んでいるちぐさを見たかどうかはわからないが、立花警部は怒りに燃えていた。
手斧を持ったあかまの手を蹴り上げ、すかさず助走をつけての拳。
今までにない、一発ごとに込められた力が大きい。それだけちぐさを想う気持ちが変わってきたのだろうか。
最後は拳銃を握ったまま倒れたあかまの顔面を殴打。
手錠をかけられたあかまは戦意喪失。熱い拳によって打ちのめされた・・・。
別れ  死んだみつよを見つめる立花警部。みつよは母を庇って死んでしまった。これがみつよにできる最後の親に対する罪滅ぼしだったのかもしれない。


 幼いみつよは旅芸人の娘として転々と渡り歩いており、ろくに仲の良い友達も作れなかった。唯一、仲良しだったのがちぐさだという。ちぐさは当時から気の善い人物だった。みつよは成長し、将来への不安が多分にあったのだろう。そして寂しい思いをし続けた時に、その隙を突いて寄ってきたと思われる死別した男。子供を母親の元に残し、単身とびだしたみつよの気持ちもわからなくもない。ただ、母親たまえはそれが許せなかった。そして絶縁。

 絶縁したといくら口では言ったもののやはり血は水よりも濃い。
再会したいというみつよの思いに母は揺れた。この母もなんだかんだ言ってもやはり一児の母親。娘のことを語る際にもらした「最近娘の夢を見る」というものにもの哀しいものを感じる。

 そんな親子を強襲するあかまとくじ。自己中心的な悪党。
ひとつも同情の余地のない悪党。思わず立花警部の拳に感情移入してしまう。


 ふと周りを見渡す立花警部。
そこには片桐ちぐさの姿はなかった。
駆けつける黒谷署の刑事たち。
ちぐさの捜査上の行為に対し、遺憾を示す署長と捜査一課長。
無言で立ち去る立花警部。一番不思議がっているのは立花警部なのだろう。
ちぐさはこのことを
「ふたりを一目会わせてあげたかった・・・」
と語っている。
どこまでも優しい片桐ちぐさ。
この優しさが多くの不幸を呼んでいるような気がしてならない。
立花警部が傍にいなくてはならないのだろう・・・。

 立花警部はちぐさの家に走って向った。着いた玄関には一通の手紙があった。
それは立花警部に嘘をついてしまったことへのお詫びだった。
立ち去る自分を探さないでほしい、かよちゃんを頼みますと書かれていた。

 立花警部は駅に走った。
プラットホームに着くと同時にちぐさを乗せた列車は走り去っていた。
ちぐさは立花警部を視界に確認し、涙する。
ホームに立ち尽くす立花警部。

 刑事の妻になる資格がないと言い残したちぐさ。
立花警部との別れはあまりにも悲痛だった。

第302話『露天風呂に浮かんだ白い死体』



プロデューサー

近藤 照男
樋口 祐三


構 成

深作 欣


脚 本
高久  進


音 楽

菊池 俊輔


エンディング

遥かなる旅路



ポプラ





出演者

島 かお

三浦 真弓

利根はる恵

久富 惟晴

今西 正男

塩見 三省

北九州男

徳弘 夏生

宍戸 久一郎

三重街恒ニ

大矢 兼臣

石井亜希子

田畑 ゆか

伊達 弘

武田 博志

小山 昌幸

杉山 孝志

立川 良一

浦上 嘉久

松井 功




丹波 哲郎
TETSUROU TANBA

若林 豪
GO WAKABAYASH

伊吹 剛
GO IBUKI"

宮内 洋
HIROSHI MIYAUCHI

千葉 裕"
HIROSHI CHIBA

中島 はるみ
HARUMI NAKAJIMA

川津 祐介
YUSUKE KAWAZU



ナレーター
芥川 隆行



撮 影
下村 和夫

;
監 督
小松 範任





315話『独房の中の花嫁』
舞台は新潟県浄土崎・・・
片桐ちぐさが殺人容疑で逮捕されたとの知らせに
現地へ飛んだ・・・
氏名 きたがわ(?)
年齢 ?
出没地域 新潟県浄土崎町
性格 陰険
家族構成
きたがわの身体データ 細身で平凡な顔立ち。
相棒
第315話での殺人歴 奥沢猛、ふるたとくじ、妻殺害
武器 手鉤、包丁
殺人の動機 口封じ及び金のため
季節 梅雨の頃
第315話での人間関係
立花警部
浄土崎署刑事たち
−−−→容疑を晴らす−−−→ 片桐ちぐさ
いとこ

共犯

→逮捕→ きたがわ(?) →嵌める→

殺害


昔の事件で
共犯


探す

奥沢 猛 かよちゃん
→疑う→ ふるた とくじ 親子
けんちゃん
←助けを求める←
容疑者  片桐ちぐさは奥沢猛殺害の容疑で逮捕された。
殺害現場にいたちぐさは事件のショックで記憶を失っていた。
浄土崎署のつるみ警部らはちぐさが犯人であると信じきっていた。
ちぐさを救うべくかよとけんちゃんが遥々東京まで立花警部に救いを求めてやってきた。立花警部は二人を連れて新潟県浄土崎へ向った。
荒療法  ちぐさの記憶は戻らず悩んだあげく自殺を図ってしまう。
その姿を見かねた立花警部は荒療法としてちぐさを殺害現場へ連れていった。

日本海の荒波が打ちつける断崖の上。

 記憶を取り戻さないちぐさは「私が殺してしまった」と叫ぶ。
興奮したちぐさを立花警部はいきなり平手打ち。そのショックで断片的にちぐさの記憶は蘇った。
その記憶と立花警部の集めた捜査上の手掛かりから犯人を推理。だが、犯人を特定するまでには至らなかった。

 だがその時、覆面をした男が立花警部に襲いかかった。
不意を突かれた立花警部は拳銃を手鉤で飛ばされ、危うく崖から落ちそうになった。
男はちぐさを襲う。犯行現場を見られたちぐさを殺害しようとした。
ちぐさが刺されそうになったその時、男の妻が

「やめて!お願いだからやめて!ちぐさちゃんは私のいとこなんだよ」

と、現れた。
妻はちぐさのいとこだった。

妻と言い合う男。カッとなった男は妻を崖から落としてしまった。
その間に立花警部は崖から這い上がり男の手鉤を拳銃で跳ね飛ばし逮捕した。

立花警部の
ナレーション
 「私はいつの日か片桐ちぐさの失われた記憶を取り戻してみせる」
他人行儀のちぐさの態度に立花警部はもの哀しい目をしていたのが印象的だった。
謎解き  所轄のちぐさを犯人と決めつける強硬な姿勢に単身で乗り込んだ立花警部。
奥沢猛の指紋から4年前の迷宮入りの事件に辿りつき事件を紐解いていった。地方警察特有の閉鎖的な体質と刑事として、ちぐさの婚約者としての立花警部とのやりとりが見どころでもあるものだった。

 今回の真犯人はストーリー上では謎解きのようなものとなっていて、推理しながら楽しめるものとなっていた。
徳永清一、望月源治、望月亀造のようにいきなり犯人が解る話と異なったものでミステリー要素が織り込まれたものとなっている。
そのため犯人の凶悪性はあまり強調されず、黒谷町シリーズとしては少し物足りないものだった。

 忘れてはならないのが梅津栄さん演じる”ふるたとくじ”のセリフ。
実におもしろいものだった。
「嘘と坊主の髪結ったことねぇんだ!」
などとこれ自体が大嘘なのだ(笑)。
胡散臭い風貌な上にこんなセリフを吐かれたらたまりません(おもしろすぎ!)。


第315話の『独房の中の花嫁』


プロデューサー
近藤 照男
樋口 祐三

構 成
深作 欣二
佐藤 純弥

脚 本
高久 進

音 楽
ピエール・ポルト
義野 裕明

エンディング
アゲイン


 しまざき由理




出演者


島 かおり

稲野 和子

田口 計

梅津 栄

石田 太郎

塩見 三省

石井亜希子

小山 友成

大江 徹

篠原 大作

山浦 栄

立川 良一

伊藤 良昭

有戸美知子

大村 一郎

浦上 嘉久

立川 良一



丹波 哲郎
TETSUROU TANBA

若林 豪
GO WAKABAYASHI

鹿賀 丈史
TAKESHI KAGA

千葉 裕
HIROSHI CHIBA

セーラ
SARHA V. LOWELL
范 文雀
BUNJAKU HAN

江波 杏子
KYOKO ENAMI



ナレーター
芥川 隆行

撮 影
加藤 弘章


監 督
小松 範任






326話『闇の中の女子大生殺人』
胡散臭さ溢れる悪党「荒巻藤吉」登場!
手斧を携え片桐ちぐさとかよに近づく・・・。
果たして立花警部はこのふたりを救えるのか・・・
氏名 荒巻藤吉 (あらまき とうきち)
年齢 ?
出没地域 東京
性格 豪胆
家族構成 息子の荒巻吾一、娘の荒巻つや
藤吉の身体データ 顔は浅黒く、目はギョロギョロしており口調ははっきりしていない。胡散臭さは望月家には見られないものがある。
相棒 つやとその男
第326話での殺人歴 なし
武器 手斧
誘拐の動機 逆恨み
季節
第326話での人間関係
立花警部

Gメンたち
荒巻吾一 片桐ちぐさ

かよちゃん

救う

→交渉→
→捕まえる→
荒巻藤吉 →誘拐→
←恨む←

共犯

→追跡→ 荒巻つや
連れの男
→誘拐→
誘拐  記憶を失ったままの片桐ちぐさは治療のためにかよと共に東京に引っ越してきた。
狭いながらも立花警部が用意した一軒家に住んでいた。

ある晩、立花警部が帰ったあと3人組みに襲われた。
堂々と正面の玄関から押し入り彼女らは拉致された。
正面から正々堂々と押し入る方法は望月源治、しまだとらおと同じでありストレートな攻め方。知能犯ではない彼らの特徴かもしれない。力で罪を犯すタイプ。
恨み  息子の吾一を逮捕した立花警部を逆恨みする荒巻藤吉。
5年前吾一は女子大生を誘拐、乱暴した上に絞殺し埋めた。
残虐極まりないヤツ。そんな息子を救うために誘拐を企んだ。
 目的は立花警部を殺害するのでもなく、身代金を要求するのでもない。
ただ、立花警部にヒイヒイ言わせたいだけという一風変った動機。
だがそれが共犯の娘たちの狙いと食い違い、結果誘拐は失敗に終わるのだった。
前科7犯  計画性のない荒巻藤吉は前科7犯の凶悪犯。
誘拐したちぐさらをすぐにでも殺しかねない奴だが、立花警部らの適切な対応によりうまく誘導された。

過去の黒谷町の悪党たちと比較するとどこか抜けた感じが否めない。
そこがおもしろいところでもある。
 荒巻藤吉。Gメン本部に電話をかけ、立花警部にいきなり
「くそったれめ!」
と、吠える(笑)。これには怖さよりも胡散臭さからくるおもしろささえ感じられた。

 その後、Gメン本部から戻った立花警部はいきなり手斧の襲撃を受けた。
荒巻藤吉がいたのである。
大胆というかまぬけというか知能犯としての賢さは感じられない。
息子の死刑執行の日時を聞き出すためにやってきた。
ねちねちと絡みつくその口調に立花警部は嫌悪感を感じた。
右往左往  つやたちは荒巻藤吉の身代金など興味無いという発言に怒り、立花警部に身代金の要求を二人で遂行した。だが、ダラダラと電話を繋げていたため逆探知されあえなく逮捕される。
付近を捜索した立花警部はちぐさの悲鳴を聴き探した。

 廃墟に軟禁されたちぐさとかよ。
荒巻藤吉を殴りつけたちぐさ。
怯んだ隙にちぐさは逃げる。しかしあっけなく追いつかれてしまう。手斧で首に当てられちぐさは以前、望月源治に襲われた時の記憶を蘇らせた。
その態度に不審を感じる荒巻藤吉。

 ちぐさはかよに
「逃げて!立花警部のところへ行くのよ!」
と叫ぶと荒巻藤吉はちぐさを離れかよを追う。
かよに追いついた時、ちぐさは大声で助けを呼びながら逃げる。
その姿を見て今度はかよを離れちぐさを追う。あっちへ行ったりこっちへ行ったりと右往左往する動きは滑稽極まりない。
つくづく荒巻藤吉はまぬけな犯罪者である(笑)。
救出  立花警部はちぐさの声のする廃墟に潜入。
屋上で荒巻藤吉はちぐさを手斧で殺害しようとするその時だった。
立花警部の拳銃が火を吹き手斧を吹っ飛ばした。
立花警部が救うのは予定通り、予想通りだが感動してしまう。
ちぐさ:「立花さん!」
かよ:「おじちゃーん!」

柵を飛び越え立花警部が助けにくる。
過去に様々な黒谷町の悪党を逮捕、解決した立花警部にとって荒巻藤吉は相手ではなかった。完全に手口を見破っていた。

立花警部:
  「貴様!誰に謝っているんだ!」
  「貴様に人の心があるのなら謝れ。土下座して自分が犯した罪を侘びろ」

荒巻藤吉はひざまずき、謝るフリをして脱兎のごとく逃走を試みた。
だが、立花警部はすかさず捕まえ拳を叩きこんだ。
愛するちぐさとかよを誘拐された立花警部の怒り方はまさに鬼のようだった。
立花警部と彼女たちとの絆が深くなっている証だった。

 荒巻藤吉はまさに虫けらのような悪党だった。
 しかし、不幸中の幸いとも言えるのが今回の事件だった。
手斧で脅されたちぐさは昔の記憶を取り戻した。

 刑事であるが故に立花の周りには不幸が付きまとう。立花警部は悩んでいた。ちぐさやかよに害が及ぶことばかりだったからだ。望月家の復讐が一段落してもまだまだ悪党が次々と襲ってくるのは立花警部の優秀さ故のもの。逮捕した凶悪犯の数に比例すると言っていいかもしれない。
思い出した かよを抱き立花警部に語るちぐさ。
「立花さん。私。私なにもかも・・・思い出したんです」
涙するちぐさ・・・。 涙を潤ませる立花警部・・・。
安堵する立花警部、黒木警視正らが見上げるシーンが実に印象的だった。

第326話の『闇の中の女子大生殺人』


プロデューサー
 近藤 照男
樋口 祐三


構 成
 深作 欣二
佐藤 純弥


脚 本
高久 進


撮 影
原 秀夫


音 楽
 ピエール・ポルト
義野 裕明


エンディング
アゲイン


 しまざき由理



出演者


島 かおり

高木 均

堀 礼文

石井亜希子

水野 あや

中田 譲治

近藤 準

柄沢 英二

平井 雅士

荒瀬 寛樹

有戸美知子

鎌田 功

山口正一郎

立川 良一




丹波 哲郎
TETSUROU TANBA

若林 豪
GO WAKABAYASHI

鹿賀 丈史
TAKESHI KAGA

千葉 裕
HIROSHI CHIBA

セーラ
SARHA V. LOWELL

范 文雀
BUNJAKU HAN

江波 杏子
KYOKO ENAMI




ナレーター
芥川 隆行



監 督
小松 範任





351話『幽霊の指紋』
望月家の残党?「柿崎源造」登場!
墓場でちぐさが見た魔物は望月源治か!?
果たしてかよを拉致したのは誰か・・・
氏名 柿崎源造 (かきざき げんぞう)
年齢 31か32歳
出没地域 長野県黒谷町
性格 極悪、自己中心的、狡猾
家族構成 源治の双子の兄弟
源造の身体データ 面構え
 望月源治とうりふたつ。
服装
 望月源治の服装と類似。暖かそうなケモノの毛皮を羽織っていて、地下足袋を履いている。
相棒 とめ
第351話での殺人歴 警官、すぎやま刑事
武器 手斧
殺人の動機 敵討ちのため
季節
第351話での人間関係
立花警部

県警やの捜一課長
黒谷署刑事たち
→追跡→ 柿崎源造 →襲う→
→拉致→
片桐ちぐさ

探す

←襲う← →拉致→ かよちゃん



匿う
→説得→ とめ →孫→
←襲う←
拉致  ちぐさとかよは望月刑事の墓参りのために黒谷町へ帰郷した。
ちぐさは墓の前で立花警部との結婚の報告をした。
その時二人を襲う魔物が現れた。
手斧を振りかざすその男はかよを奪い逃走した。
振り返ったその顔を見た片桐ちぐさはあまりの衝撃に気絶した。
源治  立花警部は拉致された知らせを受け黒谷町へ急行した。
油屋旅館でちぐさは怯えていた。
ちぐさの口から語られたのはなんと死んだはずの望月源治を見たというのだった。
(ここで望月源治の回想シーンが映る。懐かしい場面ばかりだった)

 そんな時、警官とすぎやま刑事が次々に殺された。
捜査する黒谷署の刑事たち。雪の上に残る足跡を調べると源治と同じ寸法の25.5cmだった・・・。源治の幽霊か・・。

 立花警部は霧のたちこめる夜、歩いているとさまようかよを発見。
追うといつのまにか消えていた。
と、その時空を切る手斧に襲われた。
立花警部が見たその顔はあの望月源治だった。
立花警部は追うが階段を転げ落ち追跡を断念せざるを得なかった。
付近を捜索すると望月兄弟たちが住んでいた家に辿りついた。
そこにはみっつの位牌が並べてあった。

 静まり返る中、いきなり立花警部は襲われた。
息子たちの恨みを抱く望月源治の母親とめだった。
あえなく逮捕、黒谷署で取調べを受けた。
 二人の刑事を襲ったのは墓場の源治だ、などと寝ぼけたことを言うとめだった。
指紋  とめが犯人でないことを確信している立花警部は手斧についた指紋を調べた。
結果、ひとりの男の指紋が出てきた。
それは望月源治と明かに違うものだった。
望月源治の亡霊などではなかった。

 警視庁で照合した結果、柿崎源造という男のものであることが判明した。
この源造はなんとあの望月源治の双子の弟だった。
果たして望月家は何人の兄弟がいるのだろうか(笑)。
亀造、源治、辰男、そして源造。

 源造演じるのは蟹江敬三さん。
さすが源治でその悪党ぶりを発揮しただけあってこの源造もなかなか迫力ある面構え(あたりまえか・・(笑))。
拉致U  夜の油屋旅館の前。
柿崎源造とかよ。源造は「恐ろしいことだ・・・」と、かよに復讐の思いを吹き込む。
芝居っけたっぷりのその口調は源治を彷彿させるもので実によい。

かよはしぶしぶ従う。
かよは叫んだ。「おねえちゃん!おねえちゃん!」

ちぐさは慌てて飛び出した。だがかよの姿はなかった。
するといきなり暗闇から手が伸びてきた。ちぐさは源造に拉致された。

 拉致された事実を知った立花警部はとめに対し、もの凄い形相で迫った。
源造の居場所を案内させた。
だが、案内された場所は全く見当違いの場所だった。
小屋に入った立花警部をとめは木材で殴りつけた。

 とめは恨み事を吐いた。
「おまえは亀造も辰男も源治もみな殺した。おまえは望月家の仇だ」
立花警部はそんなに私が憎いのか。気の済むまで好きなようにしろと言い、とめは立花警部を殴り続けた。

だが、体を張った説得にとめは揺らいだ。
なんの罪もないかよに一生人殺しの子だと言われる生活を送らせていいのか、と立花警部は説得。その必死な説得に遂にとめは落ちた。
 とめはちぐさたちの居場所を吐いた・・・。般若峠の神社だと・・・。
般若峠  神社の中で手斧を研ぐ源造。
源治が惚れた女の顔をじっくり見せてもらおうか、
などと言いながら手斧で口に巻かれた手拭を引き裂く。

 源治の最後を思い出させるシーンが展開。
源造は手斧でちぐさを脅しながら立花警部と対峙する。
ここでは源造は望月家の人間であることを確信させる発言を言い放つ。
とめがやってきてちぐさの解放を促すが源造はとめを突き飛ばし、鬼のような暴言を吐いた。

とめ:「その女放してやれ。かよのためだ。放してやれ」
源造:「おかん!」

とめ:「かよは帰ってきた。それでええでねえか。その女、かよを育ててくれた人だ」
源造:「おめえ、裏切りやがったな!立花とこの女 俺たちの仇じゃなかったのか!殺された兄貴や弟たちはどうなるんだよ!」

とめ:「殺したり殺されたり、もうたくさんだよ。 お願いだ。 この人放してやれ、可愛いかよのためなんだよ」

源造:「クー!邪魔するとぶっ殺すぞ!」

とめ:「それがおっかあに言う事か」

源造:「貧乏人の口減らしだって言って旅の薬屋に売り飛ばしたのは誰だ!てめえなんざいっぺんたりともおかーと思ったことねぇ!!」

とめ:「源造・・」

とめの肩を手斧で切り裂く。
飛ばされるとめ。駆け寄るかよ。
かよを抱くちぐさ。
手斧をちぐさたちに振り降ろそうとしたその時立花の拳銃が火を吹いた。


立花と源造の一騎打ち。

もみ合うふたり。だが立花の熱い拳の前に源造は歯が立たなかった。
最後には源造の口に拳銃を突っ込まれた。
源治兄弟は口が弱点なのだろうか(笑)。懐かしいシーンの再現だった。

それにしても望月源治兄弟の発言はいつも強烈な言葉ばかり発している。
いっぺんたりとも母親と思った事が無いと言うのは衝撃すら感じる。
とめが絶句するのも頷ける。
一方で突飛な発言が魅力的であることも否定できない。
想像もしないことを平気で言うから黒谷町の悪党はおもしろい。
別れ  源治のとめとかよは抱き合った。泣きじゃくるとめ。
かよは「おばあちゃん」と言いながら抱き合った。
血の繋がっていないちぐさにとってその隙に入りこむ余地はなかった。
血は水よりも濃かったのである。

かよは住み慣れた黒谷町で初めて肉親と共に暮すことになった。

列車に乗っているのは立花とちぐさ。
見送るとめとかよ。
ランドセルを送る約束を交わす立花たち。
指きりをするちぐさに元気はなかった。
最後まで「おかあさん」とは呼んでもらえなかったのだから。

駅のホームで手を振るかよ。
涙を流すちぐさ。
かよを見つめる立花。
アゲイン しまざき由理の美しい歌声の「アゲイン」が流れる・・・。
涙、涙、涙のエンディング・・・。
黒谷町シリーズの想い出が歌声によって心に蘇る・・・。
msg[2]=br;
msg[3]=br;
msg[4]="  第351話の『幽霊の指紋』



プロデューサー

近藤 照男
樋口 祐三


構 成

深作 欣二
佐藤 純弥


脚 本
小松 範任


撮 影
吉田 重業



音 楽

ピエール・ポルト
義野 裕明


エンディング
アゲイン



 しまざき由理





出演者



島 かおり

蟹江 敬三

三戸部スエ

川合 伸旺

石井亜希子

平田 守

天草 四郎

辻伊万里

今西 正男

徳弘 夏生

五野 上力

宍戸久一郎

武田 博志

小山 昌幸

立川 良一

浦上 嘉久




丹波 哲郎
TETSUROU TANBA

若林 豪
GO WAKABAYASHI

鹿賀 丈史
TAKESHI KAGA

谷村 昌彦
MASAHIKO TANIMURA

藤川 清彦
KIYOHIKO FUJIKAWA

范 文雀
BUNJAKU HAN

江波 杏子
KYOKO ENAMI




ナレーター
芥川 隆行




監 督
小松 範任






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